すべての首の矯正が安全という訳ではない
一つ、お伝えし忘れていました。
今までシリーズものでカイロプラクティックの安全性を、首の矯正を題材にしていくつか記事を掲載してきました。
こちらです。
この中で述べてきたことは
「首のポキッていう矯正は、世間一般が噂しているほど危険は少ない」
ということです。
ですが、最近とある事件に遭遇して、そう言えば大事なことを伝えてなかったな~ということに気付きまして、急遽記事を作成することにしました。カイロプラクティックの安全性の記事の第12弾になります。
その大事なこととは…
今まで述べてきた記事の中で、題材として取り上げた施術者は、
「ちゃんと首の矯正の訓練を受けてきた人達が研究対象となっている」
という前提条件がある
と言うことです。
一部、カイロプラクティック大学での学生達の首の矯正の練習に対する研究も含まれていますが、その学生たちもテクニックの指導をちゃんと受けている訳です。
つまり、闇雲に素人が首の矯正をポキポキやっても大丈夫、っていう訳ではありません。
とある事件
ここで、今回この記事を作成するきっかけとなったとある事件とは、どのような内容だったのかをご紹介します。
以前、当院に通われていたクライアント様が仕事の関係で関西に転勤になりました。しばらくぶりに用事でこちらに戻ることがあったので、ついでに当院にもご来院になりました。
そこで私はいつもの状態を想定してお迎えしました。ところが、以前と比べ状態がだいぶ変わってしまっていてビックリ。右手が動かなくなっていました。といっても全ての動きが出来なくなっているというわけではなく、一部の動きができなくなっていました。
話を伺うと、人に紹介されて地元のカイロプラクティックに何回か通ったそうですが、最後にそこでいきなり首をボキッと矯正された瞬間、右腕に電気が走り、それ以来しびれが続いたそうです。何ヶ月かして徐々に痺れは消失していきましたが、今度は麻痺が発生してきたということでした。
明らかに神経根症状ですね。
病院ではレントゲンを撮影した上で、首の骨の間が潰れているといわれたそうですが、担当医師からは首の矯正で骨が潰れる訳ではないといわれたそうです。私もコレには同意見です。首の矯正程度の力では骨の変形を作るよう力を与えることはできません。
ただし、矯正の瞬間にビリビリッと電撃が走ったということは、明らかにその矯正をしようとした手技が神経に何らかの衝撃を与え、症状発生に関係していたことは明確であり、直接的な神経損傷の原因となったか、もしくは症状発生の最後の一押しになったことが考えられます。
このシリーズ記事の修正した結論です。
ここでの教訓は、カイロプラクティックの首の矯正の訓練とは、矯正テクニックそのものの訓練もそうですが、その前段階の矯正適応の有無の判別能力や、知識がちゃんと習得できているかも含まれるということです。
常連の方が相手だと、施術者はこのような矯正適応の評価作業をおざなりにして矯正してしまい勝ちです。しかし、毎回気を引き締めて、キチンと手順を踏んでいかないといけないなと今回の件に遭遇して、自警の念も含めて改めて認識させられました。
繰り返しになりますが、カイロプラクティックの首の矯正の安全性/危険性というのは、矯正の適応の評価・判断や解剖額学的な知識、矯正技術をキチンと習得や訓練されている者であれば、各研究・調査で提示されているように危険度が低く、一般的な注射や投薬による健康被害よりも問題を引き起こす可能性は低いといえます。
逆に、このような訓練を経ていない施術者が行う首の矯正は、健康被害を引き起こすリスクが高くなるともいえます。つまり「全ての首の矯正が安全である」ということは出来なくなるということです。
オマケ
もう一つ、首の矯正について皆さんよく誤解されていることがあります。それは、昔テレビでたまに放送されていた、首の矯正のやり方についてです。図のように頭部にくくりつけた帯を瞬間的に引っ張り、首全体を瞬間的に伸ばすっていうものです。
お笑い芸人の人達がよくやられていました。
見ているこっちがビビル。
少なくとも私が知っている範囲では、あのような矯正法はカイロプラクティックには存在しません。カイロプラクティックでの骨の矯正は「スペシフィック」といい、できるだけ局所的に最小限の必要量だけを動かすことを目標としています。
ごっちゃにしないようにしましょう(笑)
まとめ
物事には絶対はないので、首の矯正の手技にも今回のような事例が発生する可能性があります。ただこれはキチンと評価し、矯正しても安全かどうかをキチンと鑑別していればリスクは相当軽減できると思われます。また、矯正をするからにはそれに見合うためのベネフィット(利益)があると見越して行うべきです。
お医者さんで処方される薬や注射も副作用が出る可能性がありますが、リスクとベネフィットを天秤にかけ、リスクを上回るベネフィットが大いにあると想定されるので処方されるのです。
リスクがあることが嫌というなら何もしない、医者にかからない、民間療法にもかからない、寝て治すっていうのも一つの考え方でアリだと思います。
カイロプラクティックって良いよ、良いよ、って持ち上げるだけでリスクは見せないようにするというのは、利用者様にフェアじゃないな~と考えています。当院のスタンスとしてはなるべく情報は提示して、後は利用者ご本人に判断して頂こうという方針で記事を作成しています。今回の事例もそのようなもとでご紹介しました。
では、今回はこの辺で。
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