ギックリ腰など急に痛めた時、冷やすべきか?温めるべきか?
今日は、神奈川県大和市の整体院【ダフィーカイロプラクティック南林間】の坂木です。
よく、当院で受けるご質問で、「急に腰や首が痛くなった時は、暖めた方が良いですか?冷やした方がよいですか?」というのを尋ねられます。
東洋医学的な考え方と、西洋医学的な考え方では、異なる対処法を指示する場合もあり、素人目にも判断が困る場合が多いようです。
出先で急に痛くなった、または休日ですぐに施術所や医療機関に行けない、などの場合で自分で対処しなければならない状況の時、ご参考になるよう注意点を解説させていただきます。
なお、記事内で「冷却」「アイシング」「冷やす」などの言葉がその都度違ってでてきますが、内容は同じ事をさしています。
1、ギックリ腰、寝違いなどの急な痛みの実際の症例
症例1 温めたら悪化した
とある冬の日の朝に予約の電話がありました。
50代の女性からのご連絡でした。
「急に腰が痛くなったので、今日の午後に空いてる時間ありますか?」との事だったので、都合よく3時ごろに空いている時間があったので、そこでご予約を承りました。
すると、昼過ぎくらいに電話があり、
「すみません、行けなくなりました。」とのご連絡でした。
私「どうなさったんですか?」
女性「実は、温めたら良くなるかな?と思い、サウナに行って、湯船に浸かっていたところ、腰が痛み出し、その場で動けなくなり、救急車で運ばれました」
という訳でキャンセルのお電話でした。
後日、お話をお伺いしたところ、特にヘルニアなどではなかったようです。
このような事例は、筋肉に炎症があったところを、温めることで血行が促進され、腫れが広がったことで悪化してしまったと思われるケースです。
症例2 温めたら改善した
真夏の朝方、顔を洗おうと腰をかがめたところ、腰がギクッと電気のように痛みが走り、それ以来、腰が固まったようになり、動かそうとすると痛みが出る、という50代の女性。
そこで、近場の鍼灸接骨院に行ったところ、冷えからきていると体を温められました。
その後、急速に腰の痛みが回復したそうです。
この場合は、体が冷えから緊張しているところに、起床時の急な動きで腰に負荷がかかり、痙攣様の筋緊張を起した模様です。特に、起き掛けなどは、体の神経と筋肉の連動が上手く作動せず、部分的な筋や関節の損傷を招きやすくなっています。
2、急な筋肉・関節の痛みは、炎症のサイン
通常、急な筋肉や関節の痛みは、組織の炎症から引き起こされる事が多いです。
ここでは、炎症のメカニズムと、それに対応した冷却法(アイシング)の方法をご説明いたします。ここで言う炎症とは、病理的な炎症のことで、スポーツ後の筋線維の微細炎症とは違います。そのため、スポーツ現場で行われるようなコンディションのためのアイシングとは、目的や方法が違っています。
2-1、炎症とは?
一般的に、炎症とは細胞組織が損傷したときなどに起る、体の防御反応と言われています。また、損傷部位が回復するための生理現象でもあります。
組織の損傷の原因には、病原体など感染症によるものや、火傷や凍傷、打撲や切り傷などの外傷、化学物質などの毒物、免疫疾患など内科的なものがあります。
炎症には進行過程があり、それは以下の通りです。
1、組織の損傷
組織が壊れると、損傷された細胞より炎症メディエーター(炎症物質)と呼ばれる、物質が放出されます。色々な物質が分かっていますが、有名なところでは、ヒスタミンなどがあります。
2、急性期の炎症反応
放出された炎症物質は、付近の血管に働きかけ、血管の壁の細胞の隙間を広げ、白血球や血漿などの血液成分を外に出やすくします。これを「血管透過性の亢進」と言います。
これは、壊れた組織の残骸や、進入してきた細菌などを処理する、免疫細胞である白血球などが、もれた血漿成分とともにターゲットとなる損傷部位に集まりやすくなる働きがあります。
これに伴い、炎症の5大兆候と言うものが現れます(後述)。
3、組織の修復
壊れた組織の残骸を取り除き、残った病原体を駆除し、壊れた組織を膠原線維という修復材で埋めます。この間、老廃物などを取り除き、修復のための栄養を運ぶため、毛細血管がどんどん作られます。この組織を肉芽(にくげ)組織と呼びます。
最終的には、膠原線維が増えて、瘢痕組織と言う固めの組織が出来上がり終了になります。この過程まで行き着かず、炎症を繰り返す、またはずっと続いている状態が慢性炎症と呼ばれます。
2-2、炎症の5大兆候
先に述べた炎症の進行過程において、炎症物質によって様々な現象が引き起こされます。それを炎症の5大兆候といいます。
それぞれの意味合いは以下の通りです。
1、発赤
ヒスタミンなどの炎症物質により、血管を広げる作用があり、血流が増加するので、皮膚面の赤みが増します。
2、発熱、熱感
血流増加により、熱を持つようになります。
3、腫れ
血管から血液成分が漏れ出し、損傷部位に移動するので、損傷部位の周辺の組織の間は液が溜まり膨張します。これが腫れとして認識されます。
4、痛み
炎症物質の中には、痛みを感じる神経を刺激したり、またその働きを増強する作用持つものがあるので痛みがでます。また、組織間液が増加する事でも、内圧が上がり、それが痛み神経を余計、刺激します。
5、運動制限
痛みのせいで体を動かすのが制限がかかります。
これらの現象が観察されるので、腰や首が痛い場合は、ご自分でも触ってみたりして確認してみると良いと思います。
2-3、炎症の処置「RICE」
打撲や捻挫など、筋骨格系の急性期の炎症処置として有名なのが「RICE」です。Rest(休憩)、Ice(冷やす)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとったものです。これは、急性期の炎症の5大兆候において対応する処置方法になります。
1、Rest(休息)
炎症が起っている部位を動かすと、負担がかかり余計に損傷部位に痛めてしまいます。また、血流量が増加しても炎症を広げてしまうので、動かさないようにして休ませます。
2、Ice(冷やす)
冷やすことにより血流量を抑え、組織液が増えるのを防ぎます。痛みの神経の伝達を抑え、痛みを減らします。炎症物質の活性を抑え、炎症が広がるのを防ぎます。
3、Compression(圧迫)
組織間液の流入を抑え、腫れの程度を抑えます。
4、Elevation(挙上)
手や足などの場合、心臓より高い位置に保持する事により、血流量を抑え、炎症の拡散を防ぎます。
3、急性期は「冷やす」、慢性期は「温める」
組織の損傷からの回復過程において、処置の仕方は、時期によって適切な方法があります。
急性期というのは、一般的に損傷してから72時間程度を言います。この間は炎症兆候が進行している時期なので、腫れがそれ以上広がらないように抑えるため冷やします。この腫れの範囲を少なく出来れば出来るほど回復期間は短縮できます。
4日目以降は、組織の修復期間に徐々に移行していきます。毛細血管がどんどん作られていき、組織を補修していく時期なので、老廃物を運び出し、栄養や酸素を運びやすくするように血流量を促す方が良いのです。そのため、温めてあげるようにします。
完全に慢性痛に移行した場合、特に筋肉などでは筋組織が硬く緊張し、血行不良になっている事が多いので、温めてあげる事は有効です。
4、東洋医学的な考え方「冷え」について
東洋医学的な考えを推奨している施術院や、医師においても、施術の第一選択として、温めることを勧めているところがあります。しかし、症例1で見てもらったように、何でもかんでも温めれば良いと言うわけではありません。
4-1、東洋医学で言う「冷え」とは?
東洋医学では、体のメカニズムを支えているエネルギーの流れを「気・血・水」の3つと捉えています。その内、「血」は血液の流れ、「水」はリンパ液や細胞間液などの体液、水分代謝などを表していると考えられます。そして、「気」は物質的なものではない生命エネルギーを表現しています。
体が冷えてしまうことは、血流不全を起し、水分代謝を悪くすると考えられ、「万病の素」といわれています。その事が筋肉などの組織の働きを悪化させ、筋肉を硬くし、腰や肩、首などの急な痛みを引き起こすとされています。
4-2、冷えからくる筋の緊張かどうかの見分け方
例えば、腰の場合。
もし、冷えから腰の筋肉が硬くなって、ギックリ腰を起している場合、腰だけでなく全身が冷えている可能性があります。特に足からの冷えの可能性が高いです。
夏場、クーラーが効き過ぎている部屋にずっと居て、仕事をしているなどの場合、特に女性では、知らない間に足が冷やされ過ぎている場合が往々してあります。
その場合、普段から足がむくみやすかったり、寝ているときに足がつりやすかったりしていないか思い出してみましょう。また、全身の冷えは内臓に出る場合もあるので、お腹を下しやすかったりしてると可能性があります。
5、「冷やす」べきか、「温める」べきか迷ったら、先ず冷やしてみましょう。
5-1、冷却法を薦める理由
冷却療法のことをクライオ・セラピーと言います。炎症に対する冷却の効果というのは、近年、冷却による効果に対し否定的な研究論文がいくつか発表されるに従い、それを理論の拠り所にして、アイシングの否定をする人たちが現れてきています。それは、炎症とは組織損傷の回復過程の事なので、炎症を抑えることは回復を遅らせる事に繋がる、という根拠に基づいています。
しかし、急性炎症時に次の理由で、当院では冷やすことを推奨しています。
1、冷却により組織間液の増加を抑えることは、炎症範囲を抑え、回復期間を短くする
炎症物質により血管透過性の亢進がおこると、血液成分が漏れ出し、組織間に液が溜まります。これにより腫れが起ります。そして、時間の経過とともにどんどん腫れが広がっていきます。
損傷組織に隣接した正常細胞の周りも、組織の間に液が溜まってしまいます。そうすると、正常な細胞組織の代謝活動を阻害し、その細胞が障害されてしまうのです。
そのため、そのまま炎症を放っておくと、腫れが広がり、障害される細胞組織の範囲も広がっていくため、回復にかかる期間がそれに伴い長くかかるようになります。
炎症物質は、冷やすと活性化が抑えられることが分かっています。そのため、冷やすと血管壁の透過性が抑えられ、漏れ出す液の量も抑えられ、腫れが抑えられ、損傷を受ける細胞の量を減らす事になります。つまり、回復までの期間を短縮化できるという訳です。
2、冷却は疼痛閾値を上げ、痛みを抑えることにより、神経系統による筋機能の抑制を防ぎ、機能低下を防ぐ
上の題目は、漢字が羅列されて難しい感じがしますが、早い話、アイシングは痛みの感覚を感じずらくします。筋肉を支配している神経は、感覚神経からの情報を元に脳が判断し、無意識的に脳からの命令を筋肉に伝え、力の出し具合を調整しています。
痛みがあったり、腫れていると、その情報が脳に伝わり、周辺の筋の出力を抑えて保護しようとします。この状態が続くと徐々に筋肉の機能が正常に働かなくなってしまい、回復させるために多大な労力をかける必要がでてきてしまいます。
3、リスクが少ない
症例1のように温めると、もし炎症が本当にあった場合、炎症が広がり悪化するリスクがありますが、冷やす場合は炎症がなくても、最悪でも症状が変わらずというレベルで留まるという場合が多く、比較的リスクが少ないので、先ず冷やしてから状況を見て、次の手段を考える方が得策といえます。
5-2、アイシング時の注意点
1、使用アイテム
患部を冷やすときは、氷かまたは、氷のうやビニール袋に氷と水を入れた物を使います。冷感湿布などは、メントールなどのスウスウする成分が入っているので冷やしている感じはしますが、実際、筋の中まで冷えが浸透しません。アイスノンの様な保冷材を使用してもかまいません。
2、冷却時間
実際、筋の内部まで冷やす場合は、結構冷たいのを我慢しなければなりません。ピリピリ・ジンジンした感覚を通り越して、感覚が麻痺したところまでもっといくと、そこで終了となります。それ以上続けると、皮膚面に凍傷を起す可能性があるためです。
時間は15分くらいを目処にします。キツクて時間を継続できないようでしたら、温度が低すぎるので、皮膚との間に布を挟むなどをして温度を調節します。
逆に、感覚麻痺が起るくらいは冷やさないと、深部には冷却効果が届かない事になります。
3、アイシングの頻度
アイシングは、損傷を負った時点から30分以内に開始できる事が理想です。それ以降は、時間の経過と共に回復にかかる期間も長引くといわれています。したがって出来れば出来るだけ早くアイシングするように心がけましょう。
最初のうちは、2時間おきくらいの頻度でアイシングを繰り返す事が望ましいです。1回アイシングをして血管が縮こまると、冷却をはずすと、今度は反射的に血管が拡張使用とします。1回冷やしたからもう良いだろうと、そのまま放っておくと、血管が拡張し、逆に血流が増す結果になります。それを防ぐために、繰り返し冷やすことが必要になります。
軽~中程度の損傷ですと、2日も冷やしていると大分痛みが引いてくるので、3日目にはアイシングが面倒になってきます。ですが、一応念のため、3日間は冷やしておくと良いと思います。逆に、特に改善してくる様子がない、または悪化傾向にある場合、温めてみると効果的な場合もあるので、試してみると良いでしょう。
5-3、冷やした方が良いか、温めた方が良いかの鑑別法
冷えからの筋の緊張の場合、全身が冷えている場合が多いです。特に腰の痛みの場合、足からの冷えが結びついている可能性が高いです。直接、患部を温めてしまうと炎症が痛みの原因であった場合、炎症を悪化させるリスクがあるので、そういった場合は、まず足から温めてみる事をお勧めいたします。
それで、例えば腰が痛かったのが、少し改善されるようでしたら、今度は腰を短時間温めてみる、というように段階を追って試してみましょう。改善されれば炎症ではなく、冷えからの緊張性の痛みと分かります。
人によっては、血は全身を巡っているので、足を暖めても結局、腰も暖まるのでダメだという人もいますが、直接、患部を温めるよりかははるかにリスクが低いと思われます。いきなりガッツリと温めなければ大丈夫だと思います。
温める方法は、足湯や、もしくは足に貼るカイロを使ってみる、湯たんぽやホットカーペットなどで温めても良いと思います。
逆に、冷やす場合は、患部に直接にあてがい、様子を見てみましょう。これで楽になるようでしたら、そのまま続行すればよいだけです。
このように先ず短時間で試してみて、楽になる方を採用すると良いです。
6、まとめ
炎症のメカニズムや、アイシングの効果、「温める」と「冷やす」の鑑別法などの解説をおこなってみました。物事には絶対と言う事はなく、ケース・バイ・ケースと言う事の方が多いと思います。
ご自分で行われる場合は応急処置として、迷われる場合はやはり専門家にご相談される方が良いと思います。
では、今回はこんなところで。
大和市の整体【ダフィーカイロプラクティック南林間】の坂木でした。
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