腕の強い脱力の症例と、医療体制について思うこと

 

今日は、ダフィーカイロの坂木です。現在、もう一つのホームページのブログの方で、カイロプラクティックの矯正の安全性についての解説を書いてます。そこで医療機関に対するある提言を思いつきました。と言うより愚痴みたいなもん?最近の症例に絡めてそのことについて述べていきたいと思います。まぁ、聞く耳半分くらいで聞いてやって下さい。

 

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1、左の上腕二頭筋の脱力を訴えてのご来院

 

ある日、問い合わせの電話がありました。内容は、腕の力が入らなくなったという事でした。地元の開業医の整形外科で数年前に診てもらったら「歳のせいだ」と言われたとのこと。

私「失礼ですけど、お歳、いくつになりますか?」

問い合わせ主「47歳です」

…40代で、加齢の筋弱化は考えずらい。

その時点で神経の疾患が考えられたので、先に病院での診察をお願いしました。

すると先方「え~、病院いかないとダメですか?」「何科ですか?」

私「神経的な問題がありそうなので、神経内科や、脳神経外科になると思うんですが」

などなどやり取りするも、どうもご本人は病院受診に消極的だったので、一度、当院で見せてもらって、そこで判断して、必要なら病院へ行ってもらうということになりました。

その時点で何故、一般開業医ではなく、病院を勧めたかというと、一度、個人院での整形外科で診てもらっていたという事と、MRI等を撮るのに再び病院に新たにかからないといけないので、二度手間になるというためでした。

 

2、来院

2ー1, 検査・評価

実際、クライアント様を拝見させて頂いたところ、腕の脱力は病的なものでした。左腕の力こぶを作る筋肉(上腕二頭筋)と肩の筋肉(三角筋)前面が、右と比べ萎縮していたのです。

 

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実際の画像↑

左の二の腕が、右と比べてかなり細くなっているのが判ります。

 

思いあたる原因はないということですが、筋力検査をしてみると明らかな弱化をしており、抵抗運動を行うと、肘の可動域全域で力を発揮する事ができません。さらには肘の角度を90度に曲げたまま維持させようとしても、10秒もすると耐えれなくなり、腕がダラリと下がってしまいます。

徒手筋力検査の評価は、0から5までの6段階でなされます。

5、異常が全くない。強い抵抗力がある。関節可動域も問題なし。
4、関節可動域は問題なく、かなりの抵抗力がある。
3、関節可動域は自重内で確保できる。抵抗をかけられると抗えない。
2、重力を除くと関節の可動域は全域動かせる。
1、筋肉の収縮は認められるが動かせない。
0、筋肉の収縮も起らない。

今回の症例では、2.5くらいとみなせます。

肩の運動は外に開く運動(外転)は問題なく行えます。また、どのような動きも痛みを感じる事はなく、今までの経緯でも痛みを自覚することは無かったとのことでした。知覚検査も異常はありません。

このような場合、見立てとしてはキーガン型ヘルニア(解離性運動神経麻痺)か、上腕二頭筋腱脱臼が考えられます。通常、上腕二頭筋腱の脱臼の場合、肩前面の上腕骨頭の腱が通る溝(結節間溝)に、腱がズレる際に痛みを伴う事が多いですが、今回それはありません。

 

2-2,施術

そこで今回は、まずキーガン型ヘルニアを想定してのアプローチを行って見ます。キーガンでも、普通のヘルニアとやることは同じになり、神経に圧迫が加わるので神経症状がでるので、その圧力を減らすことが目的になります。

施術後、肘の完全屈曲から90度曲げた位置までの間は筋力が微妙に出てきましたが、90度より先は術前と変化がありませんでした。たぶんこの違いは、補助筋である烏口腕筋や上腕筋の影響によるものだと思われます。いずれにしろ、あまり変化がみられないので最初にお願いした通り、病院での精査を行っていただくことになりました。結局、二度手間になってしまいました。

何故、病院での検査にこだわるかといいますと、第一に禁忌疾患のふるい分けのため、第二に治癒までの経過が予測がつきやすい・判断材料ができる、というためです。補足的に説明しておくと、カイロプラクティックではヘルニアは施術対象外という人も中にはいますが、必ずしもそうではありません。中程度までなら十分に対応できる疾患です。当然、重症例では禁忌です。

上腕二頭筋腱脱臼の場合も程度問題で、軽度の場合は施術で良い位置を保てる場合もありますが、中程度以上なら一度良い位置に腱を戻しても、使っているうちに再びズレてきます。要は、骨の間の溝に腱が通っていて、その上に靱帯が蓋のように張ってあるのが、部分的にめくれてきて腱が溝から脱してしまうのです。程度が酷いと、手術した方が手っ取り早いです。

 

2-3,結果

この方はその後、連絡がないので実際、診断がどう付いたのかは不明です。病院への受診を促すと、そのまま来院しなくなる人は結構います。それでも全然かまいまいません。

当院の考えとして、疑わしきはすぐ病院へとういう方針です。

私は過去にカイロプラクティック神経学を約3年くらい勉強させて頂いていました。いろいろ神経疾患の鑑別などを勉強させていただきましたが、我々がそれを勉強するのは微細な神経機能の衰えを見つける参考にし、未病もしくは施術対応範囲のクライアント様に対する施術方法を見つけるためであります。明確な神経疾患は、まずは病院での受診が必要となり、無責任に我々が手を出すものではありません。

 

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2、カイロプラクティックの安全性/危険性の記事執筆中に感じた事

現在、カイロプラクティックの安全性に関する記事を別ブログで展開しています。首の矯正手技と、首~頭部にかけての動脈損傷との関連性について問題提起されている案件を検証しようとする内容です。それは、英語論文の紹介を中心とした記事になっています。

当然、翻訳する必要があるのですが、非常に面倒だったので、先に翻訳してあるサイトが無いか探していると、カイロプラクティックの危険性に関して批判的なサイトやブログ記事によく遭遇しました。

医師の間でも、そのような意見をする人間がいる事はわかっていたし、同業他者でカイロプラクティックを堕とそうと騒ぎ立てる人間がいることもわかっているので、そのこと自体は別に構いません。

ただ、一つ思うことがあります。

椎骨動脈解離と頚椎矯正手技との関連性を指摘する論文が出るようになって、医療畑(のみならず、知ったかぶった素人でさえ)からカイロプラクティックなんて行くな、的な発言がよく発せられます。

じゃあ、実際、頭痛で困っている人たちの受け皿はどうなっているんでしょうか?なぜ、痛くなったり、具合わるくなった人たちは、こんな名も知らない場末の施術院に来るのでしょうか?

医師がカイロプラクティックに行くな!と言いつつ、自分たち医師サイドでは、そのような症状の人達の受け入れがちゃんとできていない。

例えば、先の首の動脈損傷の件で言えば、まず出る症状として多くの場合、頭痛があげられます。そして、頭が痛くなったので医者にかかるとすると、2~3分も話をしないで、頭痛薬を出されてお終い、という具合です。そのために延々と2~3時間も待たされたりします。

実際、学術論文でも、そのための動脈損傷(解離)の見落としが、カイロプラクティックでの診療を受けた人達より多いという事が発表されています(当院別ブログの記事参照のこと)。

 

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3、何故、医療機関の受診を嫌がる人が多いのか?

先の2つの出来事で思った事があります。

医療業界では、カイロプラクティックに否定的な意見を言い、カイロプラクティックに行くな!と言う。そして自分らのところに来い来い言う割には、自分達の受け入れ体制や受け入れ姿勢はできていない。そのため、こちらからクライアント様に医療機関の受診を進めても嫌がられるのです。具体的にどういうことかを2点挙げてみましょう。

3-1,混む。待たされる。病院に行けば簡単な診察でも半日から1日がかり

先ほども述べたように、待たされる、別に何もしてくれない、人の話を聞かない、などの悪い印象があるので嫌がられるのです。手術をしなければいけないような大掛かりな事態にでもなれば、また対応も変わってくるのでしょうが、一般医に最初に掛かろうという程度の病状であると、概して流されてしまいます。

まあ、当院みたいに一人当たり60分前後も時間をかけてたら、とたんに病院などの医療機関は運営が回らなくてパンクすると思いますが、そこまでしなくても何らかの手はあると思います。

 

3-2,横柄な態度

当院での過去の事例で、こんな事がありました。

首を動かすと左手に痺れが出てくる50代男性。病院でMRIを取ってもらうようお願いしました。そこで整形外科医にカイロプラクティックなんて止めろ!と言われたそうです。まぁまぁ、そういう意見もあるでしょう。医者側にしてみたら、カイロプラクティックの下請けみたいな事できるか!っていう感じでしょうし。

しかし最後に一言。「この程度の症状ならウチに来なくて良い。もっとひどくなったら来なさい」

これって酷くないですか?なんか、たまたま虫の居所が悪かったのですかね?最後の一言はいらないでしょ。

確かに病院に来るような患者さんはもっと重症の人がいっぱい来るのでしょう。それに比べれば症状は軽いかもしれません。しかし、実際、腕に痺れが出ていて、画像診断で頚椎ヘルニアも写っている。ご本人はそれで困っているので、治そうとしている。それを放っておけって…。

自然治癒で治るレベルならそれで良いし、それならそれで日常で気を付ける事や、どうしたら早く回復するかのアドバイスしてあげるとか、できそうな事はあると思うのですが。

こんな事があれば、誰でも嫌がりますよね?

 

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4、結局、何が言いたいかというと

 

カイロプラクティックにはカイロプラクティックなりの良い部分があり、それは医療とは違う物です。当然、医療には医療の良い部分があり、またそちらの方が社会的重要度があります。

普段、代替医療・自然医療を好んでいるような人達や、西洋医学を嫌っているような人達でも、西洋医学を否定している訳ではなく、イザとなれば西洋医学を頼るようになります。西洋医学の方が、強力で、直接的で、科学的だからです。

カイロプラクティックはカイロプラクティックなりの立場を踏まえ、医療領域を圧迫しよう、荒らそうとしている訳ではないのです。医療サイドは、他業種を貶めることで、自分たちの立場を優位にするような事をする必要は無いということです。

当院でも医療機関での受診を進めると、嫌がる人、消極的な人が多くいらっしゃいます。それには訳があります。他業種を批判しているより、自分たちの足元を見直して、改善していく方がよっぽど有益ではないかという事が言いたいのです。

 

5、まとめ

今回は、現在、別ブログで進行中の記事の内容と、最近ご来院されたクライアント様の件を通して、感じた事をダラダラと語ってみました。

では。

 

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