骨盤は開くのか(骨盤の構造)
【今回の記事は以前、他のブログ掲載していたものを転載したものです(2015年9月初出)。骨盤伝説シリーズの第2回目。】
今日は、神奈川県大和市の整体【ダフィーカイロプラクティック南林間】の坂木です。今回は、骨盤伝説の2回目。骨盤の構造についてです。いゃいゃ、ようやく第2回目を迎えることができました。
さて、よく巷で話題になる骨盤がチューリップの花のように、開いたり閉じたりするという現象は本当にあるものなのでしょうか?その事について考えていきたいと思います。
骨盤の骨の構造と形状をみてみて見ると、体重負荷を支えるために強固に骨は連結され、大きな歪みは許されない事が分かります。
1、骨盤の形
1-1、骨盤の形の全体像
骨盤は3つの骨でできています。イメージとしては、全体的にはお椀状になっていて、お椀の前半分が大きく切り取られたような形になっています(図1)。
寛骨という大きい骨が左右に一対と、背骨の土台になっている仙骨という台形状の骨から成り立っています。背中側の真ん中にある仙骨を左右から寛骨が挟んでいます。そのため、仙骨の左右には、寛骨との関節があります。これを仙腸関節と呼びます。左右の寛骨は、腹側では下腹部の下縁で恥骨結合という関節を作り、左右の骨がドッキングしています。関節の詳細は後述します。
お椀の空間を大骨盤腔といい、お椀の足の部分(高台と言うらしい…)を大きくして、お椀のそこに穴を開けて筒状にしたような空間を小骨盤腔といいます。この高台の部分が骨で言うと「坐骨」「恥骨」になります(図2)。
1-2、発生学的な観点でみた骨盤
発生学的には、寛骨は足の土台として発達し、仙骨は背骨がくっついてできたものなので、機能的にも寛骨は足と関連が深く、仙骨は背骨と関連が深くなっています。
寛骨は元々3つの骨からできています。幼少期にレントゲンを撮ると見えます。上半分を「腸骨」、下前の部分を「恥骨」、下後の部分を「坐骨」という骨です。股関節周辺で3つの骨が合わさりますが、それまでは互いの骨は軟骨でくっついている状態です。結合部分が骨に完全に置き換わるのは思春期あたりと見られています。
仙骨も20歳くらいまでは、背骨と同じような椎体が連なったような状態で、それが軟骨で繋がっています。その軟骨部が徐々に骨に置き換わり、20歳くらいを目処に完全に骨化します。
1-3、幼児期の骨盤
赤ちゃんは、下半身より上半身の方が先に、骨がしっかりと作られていきます。そのため体を動かすのには、腕で体を支えて上半身を起し、腕で体を移動させようとして、ズリバイになります。
骨盤帯を中心にその頃は、まだ骨がしっかり出来上がっていないので、体重を支える事ができません。股関節は外側に開いた状態で、いわゆるO脚になっています。
1-4、骨盤の歪みを触って測れるものなのか?
よく施術者がチョイチョイとお尻を触って、「骨盤がずれている」とか言うのに聞かされる事はありませんか?
例えば、椎骨の後の突起(棘突起)は左右から伸びてきて脊髄を包むように形成されて、脊柱管を形作ります。左右全く同じ割合で伸びてきて、左右全く均等に形成されれば良いですが、骨が形作られる時期に筋肉の引っ張り具合の違いなどにより微妙に左右にずれて形成される事などは多々あります。
骨盤も同じで、ランドマーク(指標となる骨の出っ張り)を左右比べる事で骨盤の左右のズレを感知しようとしていますが、そもそもこれは骨盤を形成している骨が完璧に左右均等であると言う事を前提に行っているのです。
しかし、前述のように20年くらいをかけて骨がくっついていく過程を経ていますので、その間の外力などで骨の成長が、片方が反対より引っ張られて、僅かに少し大きく形成されたり、骨の出っ張りの位置が多少上下につき方が違ったりなどの左右差は、自然とできてもなんら不思議ではありません。
したがって、当院では関節の動き、動揺性、股関節・腰椎との連動性を重視して、ゆがみ方を見極めていきます。
2、骨盤の関節は3つある
2-1、骨盤の後の関節は「仙腸関節」
仙骨と寛骨の接合部分は仙腸関節とよばれています。
仙腸関節は、体の表面から直に触って動きを見ることはできません。後上腸骨棘は体表から安易に触ることができますが、仙腸関節自体は後上腸骨棘の深部に存在し、その上を人体で一番強力といわれている後仙腸じん帯が覆っているためです。その上も幾層にもじん帯が覆っていて、体表からは後上腸骨棘と仙骨との間の溝として触れるのみです。
成人では、この関節の表面は凸凹であり、それが仙骨側と腸骨側が咬みあうように、合わさっています。
2-2、骨盤の前の関節は「恥骨結合」
左右の恥骨の結合部分には、軟骨で出来た円盤がクッションとして挟まっています。この部位を恥骨結合といいます。この関節も多少可動性があり、歩行時などに自転車のペダルのような軌道を描き、左右バランスをとっていると考えられています。
出産時には、こちらの関節が主に開きます。
3、骨盤の体の支え方
骨盤の力のかかるラインは、背骨と通って上半身から来た重みを仙骨で受けて、両側の仙腸関節へ分散して、寛骨から股関節を通り、足の骨へと繋いでいます。仙骨の形は下向きの台形状の形をしていて、両側の寛骨が作るスペースに楔状にかみ合うような構造になっています。
3-1、骨盤輪
骨盤を上から覗きこむと、丁度、輪状になっています。これを骨盤輪といいます。このため、上からかかってきた体重を背骨を通して仙骨で受け、その重みを恥骨方向に分散させながら、股関節の方に受け流しています。
体を支えるためでしたら、仙腸関節や恥骨結合などの連結部分は必要なく、完全に骨化してしまった方が、強度は増します。しかし、女性の場合は、出産をしなくてはいけないので、産道を広げるために関節があり、緩む必要があります。
また、出産に関係なく、男女ともに歩行時にこの関節は必要になり、ショック・アブソーバーの作用があるため、微細ながらも動く事が可能な構造になっています。
構造的には上から体重がかかると骨が咬みあうようになり、締まりがよくなるようになっています。そのため、体重がかかっていない時には、多少動けていた仙腸関節も、体重がかかるとさらに可動域が減ります。
骨盤輪はワッカ状になる事で負荷を分散し、重みに耐えながら、骨盤臓器を保護するように出来ています。簡単に開いたり閉じたりとグニャグニャ動いていては、骨盤がワッカ状になっている意味がなくなってしまいます。
3-2、閉鎖力
骨と靭帯で骨盤の骨は固定されていますが、さらにそれを締め付けて安定させようとする働きがあります。それを閉鎖力と呼びます。それは、筋肉と筋膜が担っています。筋肉の締め付けにより、関節が圧迫され、その摩擦が働き、関節を安定させます。
骨盤内は、筋肉、筋膜、骨膜が一つなぎになっていて、筋肉が絞まると、丁度コロセットを締めた様に、骨盤帯全体を締めてくれ安定します。これが閉鎖力となります。
肥満で腹部の筋肉が緩むと、このお腹・骨盤内を締め付ける力が弱まるのでその分、関節分負担がダイレクトにかかり、腰痛などが発生しやすくなります。
つまり、骨盤が開くから腰痛になりやすくなるのではなく、骨盤を支える筋力が弱くなるから腰痛になるのです。
4、まとめ
骨盤はしっかり体重を受け止め、脚の土台になるように強固な構造になっているという事がイメージできたでしょうか?
そのため、巷に出回っている都市伝説のごとく、フニャフニャ動くものではありません。しかし逆に言うと、ほんの少し緩みが強くなっても影響が出てくるとも言えます。
本当は、もっと詳しく書かないとちゃんとしたイメージが出来ずらいと思いますが、キリがないので、また時間があるときにご紹介いたします。
次回は、仙腸関節についてさらに掘り下げてみて、実際の骨盤内の動きと、その影響を考察していきたいと思います。
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