カイロプラクティックの安全性/危険性を論じるに当たって
当院のもう一つのブログ「ダフィーの寝言」を閉鎖するに当たり、過去記事をこちらのブログに転載する作業を進めてきました。
そろそろ最終段階にさしかかりました。最後の大仕事がこの「カイロプラクティックの安全性/危険性」についてのシリーズ記事の転載です。
一番最初に投稿したのが2016年5月なので、かれこれ3年半前になりますが、この間およびそれ以前を見回しても、カイロプラクティックの安全性についてまともに議論しているサイト・ブログが見当たりません。
あるのは、1つの報告や、新聞記事などの紹介をもとに「カイロは危険だ」とか「カイロは安全だ」とか偏った意見を述べていたり、日本の報道機関お得意の「印象操作」された報道をただ垂れ流ししている記事というのがほとんどです。
そこで今回はせっかっくなので、ただ単に過去記事を転載するだけで無く、全体的に記事を手直しして載せていこうかと思います。かなり日本語がおかしかったり、やっつけ仕事感が強かったので(笑)
まず第一弾は、カイロプラクティックの安全性/危険性を考える上で基盤となる知識を得るために、どうやって科学的根拠を得れば良いかということについて述べていきます。論文=科学的根拠と一般的には考えられますが、論文にも信頼性の度合いが色々あります。
この記事は、2016年8月初出の記事を転載しています。
1,EBC
EBCとはEvidence based Chiropracticの略です。日本語に訳すと「科学的根拠に基づいたカイロプラクティック」ということです。1990年代から起った医学会におけるEBM(Evidence based Medicine)「科学的根拠に基づく医療」という、医療行為に対しての取り組む運動があります。その流れをカイロプラクティック業界も受けて科学的根拠のあるものを遵守しようという機運が起りました。特に医療保険が適応になるアメリカでは、科学的根拠がない手技を行っていると、保険会社が保険金を払わないと言う事態が起るので、よりシビアになっているそうです。
私が最初にカイロプラクティックを教わった先生は、グランド・レイドDCという人で、そこで教わった流派はカイロプラクティック生物理学という理論体系でした。この理論は、カイロプラクティックのなかでも特にEBMを遵守する派閥だったので、私のカイロプラクティックの取り組みもその影響を強く受けています。
私の発するブログやホームページで紹介する論文やリサーチは、エビデンス・レベルが高いものを選ぶようにしています。今回、カイロプラクティックの安全性を語る上で根拠となる論文・リサーチ類もどのようなエビデンス・レベルから選ばれているかを先ずご紹介しようと思います。
2、エビデンス・レベルとは?
エビデンス・レベルとは科学的根拠の信頼度の事です。信頼度にも段階があり、そのことについてはwikipedia「根拠に基づく医療」に詳しく記載されています。ここでは、グランド・レイドDC著「カイロプラクティック・マニュアル」の中にある分類が分かりやすいので、それを引用させていただきます。
エビデンスのレベル
①無作為抽出による二重盲検で比較された臨床的追跡
②無作為で比較された臨床的追跡
③比較された臨床的追跡
④比較の無い臨床的追跡
⑤抽象概念
⑥各自の経験・意見
⑦新聞の記事
⑧各自の持論
上記の表では上の段から下に向かって信頼度が下がってきます。無作為抽出による二重盲検化された論文が一番、質の高い論文となります。
さらには、二重盲検化された信頼度の高い研究論文を集め、それを比較検討するという手法「システマチック・レビュー」(系統的レビュー)で得た情報が、さらに高度なエビデンス・レベルになります。
二重盲検とは?
英語ではダブル・ブラインド・テストといいます。ブラインド=目隠しの事ですね。薬の効果の試験などでよく行われるテスト法で、受け手(被験者)だけでなく施し手(観察者)からも何をやったか分からなくする方法です。
ウィキペディァに端的に説明されていますので引用させていただきます。
二重盲検法
行為の性質を対象である人間(患者)から見て不明にして行う試験・研究の方法を、単盲検法という。これにより真の薬効をプラセボ効果(偽薬であってもそれを薬として期待することで効果が現れる)と区別することを期待する。しかしこの方法では観察者(医師)には区別がつくので、観察者が無意識であっても薬効を実際より高くまたは低く評価する可能性(観察者バイアス)や、患者に薬効があるかどうかのヒントを無意識的に与えてしまう可能性が排除できない。そこでこれをも防ぐために、観察者からもその性質を不明にする方法が二重盲検法である。
試験の割り付けは第三者が行う。また容易に区別が付かないようにするため、無作為割付を用いることが多い。
1948年に、W・H・リヴァーズがはじめて行ったとされる。1970年代後半から、アメリカ食品医薬品局 (FDA) が新薬の許可を得るために二重盲検法の試験の要求をはじめた。
3、文献検索のソース
今回文献探索で使用したのは、主に「PubMed」です。PubMedは、世界の主要な医学関連雑誌に掲載された 学術論文情報2,500万件以上を調べることができる、米国国立医学図書館が作成した医学文献データベース「MedLine」の一般無料公開されている検索システムです。pubmed上ではそれぞれの文献の抄録を読むことができます。
この中から「chiropractic safty」で検索をかけてみると、172の文献がヒットしました。また「chiropractic cervical risk 」での検索では、171の文献がヒットします(2016年当時)。
一般的イメージとして一番怖そうなのが首の矯正であり、日本でカイロプラクティックの安全性が取り沙汰される場合は、ほとんど首の矯正の事が話題になっています。ですので、今回は首の矯正の安全性・危険性について議論していこうかと思っています。
上記の検索結果の中から実際に頚椎矯正に関する研究報告がなされている論文をピック・アップしていくと大分、数が減りますね。
余談ですが、私がカイロプラクティックを習った十数年前くらいの時には、実はアメリカで「ポキッ」とやる矯正の事故で多いのは、首ではなく腰の矯正をした時と言われました。腰の矯正を行う時は捻る動作が入るのですが、捻りが強いと浮遊肋骨が引っ張られすぎて骨折してしまうのですね。
浮遊肋骨とは、肋骨の一番下に位置する骨と、その上にある骨の2本の肋骨の事です。それより上の肋骨は、胸骨の近くで肋軟骨となり、最終的には胸骨に連結します。浮遊肋骨は、胸骨にくっついてなく、宙ぶらりんな状態なので、圧力に対して弱いのですね。
4,バイアスについて
先に述べた通り、論文の信頼度からするとシステマティックレビューや、メタアナリスティック(メタ分析)が、エビデンスレベルの最上位に来ます。厳密に言うとシステマティックレビューとメタアナリスティックは違いがありますが、一般的には同義語として扱われることが多いので、ここでは細かいことはこだわらず一緒と考えます。
信頼度の高い研究をするためには、いかにバイアス(偏った見かた)を排除出来るかが重要です。そのために先に説明した二重盲検などの研究方法が採用されるのです。
ところがエビデンスレベル最高峰といわれるシステマティックレビューでも、実はバイアスがかかる危険性があります。
有名なバイアスの一つに出版バイアスがあります。
これは、「自分が望んでいたのと違う結果が出た研究は発表されづらい」というものです。従って全ての研究論文を集めて比較検討するシステマ手ティックレビューといえども、そのベースとなっている発表データに公平性があるか分からない、といえます。
という訳で、科学的根拠があるといえども厳密に正しいかどうかと言えば、そうとは言えません。これから当シリーズ記事で多数論文のご紹介をしていきますが、これらは一つの視点として捉えて頂き、絶対正しいというわけではないので、その点はご注意して頂きたいと思います。
とはいえ、世間一般的に流布されているテレビや雑誌などいわゆるマスメディアの「印象操作」による「偏向報道」に比べれば、はるかに信頼に足ると考えられます。
5、まとめ
今回は「カイロプラクティックの安全性/危険性」シリーズのイントロダクションとして、科学的根拠や論文の信憑性について大まかに説明していきました。
次回はシリーズ記事を読むに当たっての準備として、論文中にでる用語について解説していきます。
では、今回はこの辺で。
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