PCR検査と陽性反応数、ロックダウンについて思うこと

前回の新型コロナの話の続きです。

ここ最近、感染者数が増えてきているニュースがひっ切りなしに流れています。前回、検査数が増えれば陽性者は相対的に増えるというお話を少ししました。現在、検査数がどんどん増えているので、当然感染者数が増えるのは当たり前の結果です。

 

PCR検査数について

wikipediaに「2019-nCoV Data/日本のPCR検査実施数の推移」というデータとグラフあがあります。誰が作ってくれたのか分かりませんが、非常にありがたい。そのグラフが下の図。クリックすれば大きく表示されます。

検査数と陽性者数を同じグラフに記してますが、陽性者数が検査数より極端に少ないので、陽性者の推移が図の下にちょこんと描かれているだけになり、分かりづらいと思います。そこで、2つを分けて、同じくらいの大きさのグラフにしたのが次の図。

東洋経済オンライン「新型コロナウイルス国内感染の状況」より

上のグラフがPCR検査実施数の推移、下のグラフが陽性者数の推移で、2月17日~7月15日までとなっています。PCR検査の方は縦軸の1目盛り2000人、陽性者数の方は100人となっています。折れ線は移動平均線です。赤の矢印は4月7日の緊急事態宣言が発令された日、緑の矢印が5月25日の宣言解除日を表しています。

グラフの通り、検査数が増えれば陽性者数も増えるを表しているのですが、感染第1波と第2波では検査対象の内容が違うので単純比較できないっていうのがミソ。第1波の時も現在のように検査対象の門戸を広げていれば、あるいはもっともっと感染者数が増えていた可能性もあります。

PCR検査の実施数は、検査の実施と数の集計にタイムラグがあるそうです。また、検査をしてその場で陽性が判明する訳ではないので、実施数と陽性判明日にもタイムラグがあります。さらに新型コロナは感染してから潜伏期間が数日~2週程度あるので、感染者数は検査した日よりもっと以前に感染していた人の数を示しています。感染者数を見る場合、ここら辺のことを頭に入れてみると良いです。

 

PCR検査はやっても意味がない?

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議5月4日分析・提言書によると、人口10万人あたりのPCR検査数は、米ニューヨークは4484人、ドイツは3043人、イギリス882人、韓国1198人、シンガポール1708人となっており、それに比べ日本は187人でした。

6月末時点での人口10万人当たりの検査数は、アメリカ9730人、ドイツ7010人、イギリス7364人、韓国2444人、シンガポール7038人、日本530人です。(時事ニュースより)

7月26日現在の状況は下の図(Our World in Dataより)。日ごとの1000人あたりのPCR検査数になります。

上から順にアメリカ、イギリス、シンガポール、ドイツ、イタリア、韓国、日本、台湾を示しています。日本の検査数は以前に比べて増えてはきていますが、欧米やシンガポールに比べてもまだ極端に少ないですね。7月後半で1万~1.5万件をようやくコンスタントにやるようになってますが。

新型コロナの感染者の8割は人にうつさないということが報告されています。ですが逆に言うと2割は人にうつします。ですので例えうつす割合が低くても、母数が増えれば当然うつされる人もそれなりに増えます。

個人的には、今感染者が増えているのは、今年前半に検査を抑えたせいで、未確認感染者が潜在的に増えた為ではないかと思っています。それがジワジワと増えてきて、検査数は増やしたら明るみなってきたというイメージです。

そんな中で以前からよく言われていた意見「PCR検査はやっても意味がない」というのがあります。特に4月くらいにこの意見の記事を頻繁に見ました。

では、逆に考えるとなぜ日本以外の国は意味のない検査を積極的におこなっているのでしょうか?不思議に思いませんかね?

 

PCR検査数を増やすことに反対の人の意見の一例。

医療法人社団悠翔会 佐々木医師 の解説「本当にPCR検査は必要か?」

東洋経済オンライン ウイルス専門医 西村医師のインタビュー

ネットで検索すると、その他上記以外にも検査数は増やす必要はないという趣旨のブログが多数ひっかかりますが、ほとんどが医師や研究者でない門外漢の人の意見なので参考になるものがあまりありませんでした。

PCR検査数を増やすことに賛成の人の意見の一例。

生物学博士inkブログ「CR検査をすると医療崩壊が起こる。早期発見しても意味がない。というデマについての考察」

山梨大学3m.com「医療維新」投稿記事

上記のブログはめちゃくちゃ参考になるので、ぜひご覧ください。

この様な情報を参考にして、単なる感情論で騒ぐのでなく、冷静に判断していく必要があるのではないでしょうか。

 

あと、日本は先進国の中では新型コロナ対策が成功しているという意見があります。これは違うと思います。

情報の出所はこれ、米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)の5月14日付の記事「日本のコロナ対策は奇妙に成功した」。

これを各ネットのニュースサイトが次々と報道したわけです。

PRESIDENT on line

デーリー新潮

確かに欧米各国と比べると日本の感染死亡率がかなり低くなっています。

しかし、3月くらいから言われていましたが、新型コロナの感染状況は人種差があると考えられているのです。欧米人は感染しやすく、アジア人は感染しずらいのではないかという訳です。

実際、アジア圏のみでみるなら日本の感染防止成績は悪いです。これは先ほど述べてように検査数を抑えることにより感染実数を把握しようとしなかったためであり、これが一因となり予防対策がキチンとできなかったことにあると考えられています。

参考記事

東京保険医協会「日本ではPCR検査がなぜ進まないのか」

 

ロックダウンについて

日本では諸外国のようなロックダウン=完全封鎖はないですが、緊急事態宣言からの自粛要請がありました。

海外でのロックダウンは効果があったのか?という疑問に対して研究結果もまちまち。

newsweek日本語版5月8日「ロックダウンは必要なかった? 「外出禁止は感染抑制と相関がない」と研究結果」

この中で紹介の未読査論文では要旨は次の通り。

・欧州30か国のデータから分析した、英イースト・アングリア大学(UEA)の研究チームの研究。

・感染拡大のの抑制に効果があったのは、休校、大規模集会の禁止、レストラン・バー・レジャー施設・イベント会場の閉鎖。

・上記以外の業種の営業停止は抑制効果が見られなかった。

・外出禁止は感染率減少と相関がなく、期間が長引くほど逆に感染者数が増加した。

上記記事から1ヶ月後の記事

BBCnews日本語版6月9日「欧州のロックダウンが「300万人の命を救った」 英研究」

・学術誌ネイチャー・オンライン版の8日掲載の英インペリアル・コレッジ・ロンドンの研究チームの未読査論文。

・欧州11か国の移動制限処置の影響の評価。ロックダウンしなかった場合の死亡者数を数量モデルで予測。

・欧州11か国の5月初旬までの死亡者実数は13万人だが、ロックダウンなしでは320万人が死亡する計算になった。

真逆だね。本当のことがわかるのはもっと先のことになるでしょう。

一方、日本の場合は自粛要請に効果があったのかについてはどうでしょう?

大阪の場合は、ピークアウトは「自粛要請前に来てしまったいたようで相関は少ない」と大阪府の新型コロナウイルス対策本部専門家会議で発表されました。

京阪神ニュースLmaga.jp「コロナ収束に自粛は関係なかった、大阪の専門家会議で明言」

この会議ではソーシャルディスタンスについても提言がありました。

「空気感染しない?大阪府がソーシャルディスタンスの見直し」

こんな結果です。

個人的な意見ですが、自粛要請に関しては本当に効果がなかったとしても実施は妥当かなと思います。未知のウイルスなので、結果がどうあれ実際やってみなければ分からないというところです。結果が出ればそれを評価して次につなげれば良いのです。

 

まとめ

基本的に大事なのは感染状況をキチンと把握しないと、今までの実施してきた対策が良かったのか悪かったのか評価できず、次に流行の時に、もしくは第3波が来た時に正しい対応ができないというのがあります。

そのために検査数が増えるのには賛成です。ですが、それで感染者数が増えるのも致し方ないと思います。そこで変にパニックにならないことです。

あまりに神経質になりすぎて非科学的なことを盲信している人たちがいます。

例えば「ジョギングの時はマスクをしろ」

とある研究で、走っている時の吐いた息が拡散する範囲はこんなに広がります、というような発表があったのですが、それにかこつけて走っている人が近づくと感染しますと言い出す人がいます。

人の吐息に含まれるウイルス量って、立方あたりどんぐらいなんですか?それが離れたところを瞬間すれ違うだけでどれだけのウイルスが付着するっていうの?人体に取り込まれたウイルス量ってどのくらいで発症するの?どれも分かっていないことだらけ。しかも、まあ考えてもリスクは低いじゃないかっていうのは想像できる。

日本感染症学会の一般向け提言にもジョギング時のマスクの不要をうたっています。

これは一例ですが、このようなことが多岐にわたり存在しています。

現在分かっていることのまとめで分かりやすい記事がありましたので掲示しておきます。

MEDLEY「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最新情報まとめ:患者数(感染者数)、死亡者数、気をつけるべき点など」

 

以上で今回のコロナ関連記事はおしまいです。

気を付けるべきところは気を付けて、健康で文化的な生活を送ってください。

では。

 

 

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