頻繁に体のあちこちが痛くなる人のための栄養とは?
体が痛みを発する時に内蔵・神経が原因でない場合、筋肉・関節の炎症が原因となる場合が多いです。
当院では、体の痛みがあちこち移る人をよく見かけます。そのような人は、炎症を起こしやすい体質ではないかと考えられます。これから数回に渡り、体質改善として普段の痛みのケアに、食事を通してできる事に関するトピックをお伝えします。
今回は、脂質編です。
参考資料;
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』、「日本の食事基準2020年」、「令和元年度 国民健康・栄養調査の結果・概要」、NSCA機関紙
脂質による炎症の改善
数多くの研究により、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)、α-リノレン酸(ALA)が炎症に緩和作用があることが分かっています。
これは、特にオメガ3脂肪酸の摂取量が増えると、体内でつくられるサイトカインやプロスタグランジンと呼ばれる炎症誘発性物質が減少するためです。
脂肪酸は構造により短鎖脂肪酸,中鎖脂肪酸,長鎖脂肪酸に分けられます.主要な食用油に含まれる長鎖脂肪酸は、炭素間の二重結合の有無で、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸は、物質的に安定していて、バターのように常温で固体として存在する油脂です。不飽和脂肪酸は逆に不安定で、植物油のように常温で液体となります。
中鎖脂肪酸は全て飽和脂肪酸となり、ココナッツオイル、バーム核油が主な原料です。短鎖脂肪酸は、腸内で細菌が食物繊維を発酵させる際に作り出され、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが代表的で、飽和脂肪酸に属します。
不飽和脂肪酸には、ω3脂肪酸,ω6脂肪酸,ω9脂肪酸があり、哺乳類はω3脂肪酸とω6脂肪酸を体内で合成することができないので、食事により摂取する必要があり、これらは必須脂肪酸と呼ばれています。
ω3脂肪酸について
・ω3脂肪酸の種類
α-リノレン酸(ALA)、エイコサエンタペン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)など
・ω3脂肪酸が摂れるもの(可食部100g当たり含有量)
ALA | |
シソ油(えごま油) | 58000mg |
亜麻仁油 | 57000mg |
菜種油 | 7500mg |
黄な粉 | 2000m |
DHA | EPA | |
クロマグロ脂身(トロ) | 3200mg | 1400mg |
サバ開き干し | 3100㎎ | 2100mg |
焼きサンマ | 1200mg | 560mg |
マイワシ刺身 | 870mg | 780mg |
など
α-リノレン酸は体内に吸収された後、エイコサペンタエン酸(EPA)→ドコサペンタエンサン(DPA)→ドコサヘキサエン酸(DHA)へと代謝されます。
ω3脂肪酸の摂取量目安は1日に、男性2000~2400mg、女性1600~2000mgとされています(約2g/日) 。
1日3000mg以上の過剰摂取では、出血しやすくなったり、下痢、LDLコレステロール値上昇することがあるので注意です。
ω6脂肪酸について
・ω6脂肪酸の種類
リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸など
・ω6脂肪酸が摂れるもの
ベニバナ油、コーン油、大豆油、ごま油など
ω6脂肪酸(リノール酸)は体内に吸収された後、γ-リノレン酸→アラキドン酸→プロスタグランジン(PG)などに代謝されます。PGは炎症を引き起こす物質でもありますので(特にPGE2)、摂り過ぎには注意が必要で、日常では過剰摂取しやすいと言われています。
PGは免疫の働きを担っているので、体にとっては必要ですが、過剰にあると炎症を起こしやすくなります。したがって、ω3とω6はそれぞれ牽制しあってコントロールしています。
トランス脂肪酸について
不飽和脂肪酸は天然ではほとんどがシス型です。食料油脂の固定化の過程で水素添加して作られたものがトランス型の脂肪酸です。マーガリンやショートニング、それらを使ったパン、クッキー、ドーナツ、スナック菓子などの揚げ物に含まれます。
トランス脂肪酸は心臓疾患増加のリスクが高まり、血中の炎症因子が高まる事が知られています。
体重管理が気になる方への情報
飽和脂肪酸について
肉、牛乳、バター、卵黄、チョコレート、ココアバター、ココナッツ、パーム油などに多く含まれています。世界保健機構による2016年のレビューでは、多量の飽和脂肪酸の摂取は心血管疾患のリスクを高めるとされています。
体内で余剰の糖質、タンパク質等が存在するとアセチルCoAを経て、飽和脂肪酸の合成がされます。
中性脂肪について
体内の脂肪は中性脂肪(トリグリセリド)として蓄えられます。脂肪酸とグリセリンが結合したものです。
まとめ
今回は炎症軽減のための食材として、脂質の紹介をしました。
不飽和脂肪酸を積極的に摂ろうといっても、いつも摂っている食事に加えて新たに脂質を加えると、人によってはカロリーオーバーになってしまうかも知れません。関節痛があるのに体重を増やしては逆効果になってしまう事もあるので、その点はご注意ください。
ω3の抗炎症作用は、筋肉・関節疾患だけでなく、アトピーなどのアレルギー性の炎症や、癌による炎症などにも有効性が研究で判明してきています。
上手に活用していきたいものです。
では今回はこの辺で。
次回は、炎症回復に効果的なビタミン・ミネラル・その他栄養素を予定しています。
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