流産と喘息と花粉症
今日は、神奈川県大和市の整体【ダフィーカイロ】坂木です。
なんか、鼻がムズムズするな~、と思っていたら、よく考えたらもう花粉症の季節なんですね。花粉症といえば春の風物詩という印象ですが、早い人では冬の真っ只中、1~2月からでも発症します。
私も花粉症ですが、今年は雪も降りましたが、全体的には暖冬傾向なので、花粉症の始まりも早い気がします。あ~、やだやだ。
今回はこの季節に関連して、流産とひどい咳き込みとの関係のお話です。
1、流産とひどい咳き込みとの関係
喘息や花粉症などでひどい咳をしだすと、妊婦の方は腹圧がかかり過ぎて流産しないかととても心配になります。
特に花粉症の時期は、副鼻腔でできた膿(後鼻漏)が咽頭に垂れてきて、喘息の咳き込みで炎症を起こしている咽頭を刺激し、余計に咳がひどくなることがあります。
「そのくらいの刺激では流産はしません。もし仮に流産してしまったとしても、それはもともと遺伝子的な問題であったのです。」
質問サイトなどで一般の方が回答している書き込みで上記のような文面をよく見かけます。
しかし実際は、あまりにひどい咳き込みの場合、病院サイドから入院して咳の管理をするよう勧められる場合もあります。
それは、喘息と流産や胎児への影響について、信頼度の高い学術論文がいくつか出ているからです。
2、喘息と流産との関係
medline(科学的論文の検索システム)より論文を紹介します。
【Relationship between maternal asthma, its severity and control and abortion.】
著者;Blais L, Kettani FZ, Forget A.出典; Hum Reprod. 2013 Apr;28(4):908-15. doi: 10.1093/humrep/det024. Epub 2013 Feb 20.
【妊婦の喘息に関する重症度とその管理具合と流産との関係】
(結論)
管理されていない重症の喘息の妊婦は、流産リスクが高い。
(概要)
ケベック州(カナダ)のデータベースで、1992年から2002年の間の、喘息でない妊婦34331名、喘息の妊婦 15107名を抽出し、流産との関連を検討した。喘息持ちの妊婦は、喘息の無い妊婦より流産リスクが1.41倍高い。管理されていない喘息持ちの妊婦は26%が流産していた。
当然、喘息持ちの方でなくても流産する割合は、一定数いらっしゃいます。しかし、喘息持ちの方のほうがより流産リスクが高くなる、ということが数値的に明らかにされています。
ここでポイントは、喘息発作をコントロールされているか、いないかです。特に喘息の発作が強い方は、医療機関でよくご相談されましょう。
もう一つ、ご紹介。周産期医学必修知識(東京医学社)より抜粋。
【呼吸器疾患合併妊娠~喘息の薬物治療を中心に~】
(抜粋)
・妊娠中の喘息の経過は、軽快・不変・悪化が1/3ずつの割合で起る。
・重症度が高いほど、妊娠中に悪化する傾向にある。
・増悪する時期は妊娠24~36週が最も多く、分娩後3ヶ月以内に75%が妊娠前に戻る。
・喘息を合併する妊婦では周産期死亡率、子癇前症、低出生体重児、早産のリスクが増加する。
・喘息が重症であっても管理を厳重になされた場合は、周産期予後の増悪は認められない。
妊娠中は、母親の代謝が亢進し、血中酸素も必要とされます(体内環境からみた不妊のメカニズム参照)。喘息発作により酸素摂取量が減少すると、酸素が充分いき渡らず、胎児の発育に影響が出ると考えられています。胎児の酸素供給は胎盤から行われます。胎盤からの酸素供給能力は、肺から酸素供給能力より低いので、母体の酸素摂取が減少すると胎児もその影響を強く受けます。
3、カイロプラクティックが咳に対してできること
さて、我々カイロプラクティックを行う人間として、人々の健康増進にお役に立つということが行動理念であります。そのような立場から、喘息発作のある妊婦さんに何ができるかと言う事を考えてみます。
喘息の症状のコントロールには、薬剤による症状管理が第一選択となります。そこは疑う余地がありません。現段階での喘息治療薬(テオフィリン、吸入β刺激剤、吸入ステロイド剤)の胎児への影響(奇形の発生率)は、数々の研究論文から喘息が無い人や薬を服用していない人々に比べ、有意差がなく特に心配する必要は無いとされています。花粉症などの抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬での短期服用では、奇形発生率などで大方の研究では影響を認められていないようです(一部の研究では影響を指摘されています)。
ただし、これらのことは医師の管理下での処方により行われるべきで、ご自身の独断で市販薬を勝手に服用というような行為は避けるべきです。妊娠初期は胎児の体の形成に影響が強く出る時期なので、低酸素による胎児発育のリスクと、薬剤の影響による奇形発生率のリスクを鑑みて処方量を調節する事が重要となってきます。
そのような事を踏まえると、カイロプラクティックの施術が少しでも咳の発作を抑えたり、妊婦さんの苦痛を減らす事ができる事により、減薬に繋がる事ができれば有益ではないかと考えられるのです。
そこで、カイロプラクティックの手技の中で、特に花粉症や咳き込みなどに有効ではないかと思われる事柄についてご紹介していこうと思います。
3-1、ニューロオリキュロ・セラビー
微弱な電気刺激を耳介に加え、そこから脳神経(顔面神経、三叉神経、迷走神経など)を介して脳内の活性化を行おうとするのがニューロオリキュロ・セラピーです。
快感・幸福感を司るドーパミン作動性ニューロンA10神経回路の活性化による、痛みの軽減や依存症の軽減に効果が期待されています。
当院ではアレルギーに対する炎症作用の軽減を期待して使用しています。現状では、花粉症に対する有効率は50%くらいで、薬の使用量・使用頻度の軽減や、薬の効果の促進が観察されています。
3-2、内臓マニュピレーション
気管支に炎症が起り、気道が狭くなると酸素摂取量が減ってきます。気管の柔軟性を改善し、気道が広がりやすくするような手技(気管支モビレゼーション)が有効ではないかと考えられます。
また、多数の咳き込みにより肋間筋や横隔膜も緊張を強いられます。横隔膜は、咳がひどいと痛みを発する事があります。そこで緊張を軽減し、呼吸を楽にすることにより、淡の排出を促す効果や痛みの軽減を図ります。
3-3、筋肉と骨格へのアプローチ
咳・くしゃみが続くと呼吸器周りの内部の筋肉だけでなく、肩や首、背中など体の外側の筋肉・組織も同様に緊張を強いられます。特に首周りの筋肉は緊張が強くなる傾向にあります。
首肩周りの緊張を取ることにより、日常の不快感を軽減し、生活しやすくなるよう貢献していきます。
4、まとめ
もともと喘息持ちの方は、花粉症の時期に花粉のアレルギー反応と相まって症状が悪化する事があります。また、花粉症の持病がなくても、妊娠期に喘息の悪化する割合は1/3の人々にあります。
咳の発作をコントロールされていない重症者は、妊娠中に流産をはじめとする様々なリスクが高まります。
妊娠期は様々な薬剤の制約がかかってきます。また、使用できる薬であってもできるだけ使用量が少ない方が望ましく思われます。
そのような時にカイロプラクティックがお役に立てるのでないかと考えます。では、今回はこの辺で。
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