目次
治療計画
①炎症の過程について
人間が怪我したとき(組織が壊れた時)の修復過程は次の通りです。
●急性期;通常受傷してから3日間~長くて1週間
腰や首が「ギクッ」となった時は筋膜や靭帯などの組織が傷ついた状態です。周辺の毛細血管も傷つき流血し、発痛物質が出て神経を刺激します。それに伴い腫れ・赤み・熱感・痛みが見られます。
この段階の処置は、腫れが増大すると周辺の正常組織も酸欠でダメになり、回復が遅れるので冷却・圧迫することによりそれを抑えます。また患部を動かすと炎症が悪化するので固定し、休ませます。
通常施術の内容は、上記処置後、周辺部を緩ませたり、矯正することにより患部に負担をかけない状態を作り、回復が速やかに行われるよう促します。受傷直後に患部を直接矯正することはなく、少なくとも2~3日後からです。
●修復期;急性期後~一ヶ月くらい
壊れた組織の部分を膠原線維という代替品で埋めて修復します。この組織は元の組織より弾力が弱く、線維の方向も外力に対して抵抗できるよう配列されていなので弱いです。
矯正を積極的に行うことにより、関節の可動域を広げ、痛みの出る範囲を抑えつつ、膠原線維が多方向の動きに対応できるよう促します。
●慢性期;1ヶ月以降
そのまま怪我を放っておくと、膠原線維で埋められたところが瘢痕性萎縮といって硬くなっていきます。
また、怪我をした周辺の筋肉・腱組織の中にある体の位置をモニターしている神経も狂ってきているので、体の動かし方が安定しなかったりします。
さらに、一度怪我したところにさらに負荷をかけないよう防衛反応として痛みを感じる神経が過敏になったりします。 そうなると、怪我した組織は回復してもいつまでも痛みが残る原因になります。
防御反応で硬くなった筋をゆるめ、患部をかばう為に不自然になった体の動きを是正していきます。過敏になった神経の正常化を目指します。
②習慣による筋肉への影響
筋線維は、健全な状態のときの長さに比べ、不健全な状態が続くと変わってしまい、本来出せるべき力が出せなかったりします。不健全な状態が習慣化してしまい、筋長が元に戻らなくなってしまっている場合、筋肉のリハビリとしてエクササイズが必要となります。
○廃用性萎縮(はいようせいいしゅく)
あまり使わず、縮んでしまった筋肉。座りっぱなしの太ももの裏など。
○廃用性弛緩(はいようせいしかん)
あまり使わず、伸びて緩ん でしまった筋肉。筋力が弱くなる。
○緊張性拘縮(きんちょうせいこうしゅく)
使いすぎで、固まっ た状態。悪姿勢での労働による腰など。
③体調改善のペースについて
人間の体に変化を起こすには、ある程度期間が必要です。運動選手が日々練習を重ねることにより、上達していくのと同じことです。 体調を改善していく場合も、徐々に改善していきます。その際、まっすぐ右肩上がりで改善する場合より、上がったり下がったりしながら全体的に向上していくように改善していきます。それは、仕事が忙しかったり、ストレスを受けたり、食生活や睡眠などの生活環境や生理的なことなどいろいろと影響を受けるからです。
体が変化し、改善を感じられるようになるまでは、人によって様々です。ちょっとやって変化が出ないとすぐあきらめてしまう人がいますが、そのような人はいつまでたっても改善しません。
人間には本来、だれでも自然治癒力(自分で自分を治そうとする力)があります。自分自身を信じて継続することが肝要だと思います。
④施術内容の変化について
矯正をする場合、計画を立てて実行していきます。矯正計画に沿いながら、前回の矯正の反応と照らし合わせ、矯正の内容を検討して施術内容を決定し、施術に臨んでいきます。不定期に来られると前回からの積み重ねが出来ないので、できるだけ施術計画に沿ってお受けになられるようお勧めします。
矯正は数回行った後、改善度合いを評価し改善傾向なら内容継続、改善がストップしているなら新たな刺激を加えてみる、変化が見られないようなら別のアプローチを試みるという具合です。
⑤矯正プログラムの進め方
①②③④に基づいて当院では次のような矯正のプログラムで進めていきます。全体的な流れは、個々
の関節・筋肉を診ていき、次に全体を正し、次に全体の動きのコーディネーションを改善していくと
いう感じです。
矯正プログラムの進め方について
障害改善期
痛み・痺れの原因を割り出し、個々の関節の動きを正常化し、部分的にかかる負担を軽減させ、筋肉や関節の炎症や痺れから速やかに回復できるよう環境作りをしていきます。
機能回復期
慢性的に障害を受けている筋・靭帯や痛みのために固まってしまった筋は元の正常な長さや力が発揮できなくなっています。体全体の歪みを修正し、靭帯・筋膜が正しい長さになるよう促し、特に姿勢を維持する筋肉の改善を図ります。これを怠ると動きの不安定で、再び部分的に負担がかかり症状が出る元になります。
強化期
個々の関節の動きや筋肉の働きが正常化した段階で、最終的にはそれぞれが連動してスムーズに動けるようにしていきます。症状の再発を防ぎ、日常生活がよりパワフルに活動できるよう促します。
コラム (治癒の過程)
皆さんが治療院に来られる目的は、症状や痛みを取るためにいらっしゃいます。一般に痛みや症状は悪者として扱われますが、果たしてそれだけなのでしょうか?
痛みや症状は、そこまで体が悪くなったというシグナルを出しているのです。その意味を考えず、ただ痛みを抑えるだけ・その場しのぎの処置をするだけではかえって状況を密かに悪化させているかもしれないのです。
症状が出ているときは、それまでの生活習慣や行動の内容を見直すチャンスかもしれません。カイロプラクティックという全体観的療法では、お体の現状から何を訴えようとしているのかを考えていく療法だと思います。
それらを精神・構造・化学にふるい分け、どのような要因が有り、それぞれがどのくらいの割合で症状に関与しているのかを考えアプローチしていくのが良いと思います。
手技療法の中には、「根元さえ捕らえて処置すれば後は良い」的な療法や流派が数多くありますが、実際はそこが本当に正しいかどうかはわかりません。当てずっぽうになり逆に非効率かもしれません。
繰り返しになりますが、いくつもの要因が重なり体調は崩れるので、それを一つずつ解きほぐしていくことにより核に近づいていくほうが良いのです。
例えるなら、「自己治癒力」という人が「回復」と言う名の坂道を登っている状態です。「症状」と言う名のいっぱいの荷物を一つずつ取っていってあげるならば、身は軽くなり自然と治癒力は力を取り戻すでしょう(図1,2)。
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