骨盤は開くのか(仙腸関節について)
【今回の記事は以前、他のブログ掲載していたものを転載したものです(2015年11月初出)。骨盤伝説シリーズの第3回目。】
今日は、神奈川県大和市の整体【ダフィーカイロプラクティック南林間】の坂木です。今回も、骨盤は果たして開くのか?を考察する第三弾になります。
今まで、一生懸命このネタを書いていましたが、今回これに関して、ネットで調べ物をしていると、
なんと!NHKの「ためしてガテン」ですでに似たようなことを放送していたらしい。。。ということが判明。
何だ、国営放送ですでにやっていたのか、、、
今更感がありますが
気を取り直して、書いていきましょう。
今回は、骨盤の関節3つの中で、その可動性がもっとも議論される仙腸関節について検討してみたいと思います。果たして、骨盤は開くのかを議論する時、重要なポイントになります。
1、仙腸関節の形状
一般に仙腸関節の形状は、耳のような形をしており、仙骨側の関節面は溝状に窪んでいて、寛骨側は盛り上がってます。関節の機能学で有名なカパンジーでは「この溝と隆起が組み合わさってレール状になり、その軌道で関節が動く」とされています。しかしこの関節面はかなり凸凹に波打っていて組み合わさっています。また、右と左の仙腸関節の関節面自体も同じではなく、個体差もかなりあるそうです。
しかし、この仙骨側の窪みや寛骨側の盛り上がりも、10代の頃は存在しておらず、関節面はフラットになっているという事が研究で分かっています。この関節の凸凹具合も、30代40代と年齢と共に多くなっていきます。どうやら、日々の体重がかかる中で、圧力が加わり徐々に形成されていっているようです。
2、関節軟骨のつき方
人体の軟骨には3種類あります。一番、関節というとイメージしやすいのが膝の関節などがあると思いますが、あの膝の骨の表面についている軟骨が硝子軟骨と呼ばれる種類の軟骨です。骨が成長する時に硝子軟骨が増殖し、そこが骨に置き換わっていきます。次に、線維軟骨という種類の軟骨があり、代表的なのは背骨のクッションになっている椎間板です。3つ目が弾性軟骨というもので、代表的なものとして耳たぶや鼻の部分などで、かなり柔らかい事が特徴として挙げられます。
仙腸関節は線維性軟骨によって連結された関節とされていますが、仙骨側の関節面も腸骨側の関節面も硝子軟骨が覆っている滑膜性関節が存在します。滑膜性関節は、肩の関節や膝の関節のように一般的にイメージされる関節を指します。そのためこの関節は動くことができる関節です。
関節で骨と骨を繋ぎ合わせているのは関節包です。関節包は靭帯などで補強されています。仙腸関節においては、靭帯最強といわれている骨間靭帯が関節包と線維が混ざり合い、支えています。
3、仙腸関節の動き方
ここの関節の動く範囲は、研究論文によってかなり差があります。一般的には、回転運動が0.2~2°、並進運動が1~2㎜(筋骨格筋のキネシオロジー/Neumann著)と考えれれています。ここで並進運動という耳慣れない言葉が出てきますが、意味は「まっすぐの動き」の事です。
回旋運動とは、仙骨もしくは寛骨が関節面に対し、前側に倒れるように動くか、後ろ側に倒れるように動くか、という関節面を軸にした回転の動きです。
それに対し並進運動は、関節面に対し、前後の動きになります。
実際に動く時は、この二つの動きが組み合わさって動きます。仙骨を中心に考えると、仙骨が後方回旋する時は同時に前方へ進み、前方回旋する時は後方へ進みます。
仙骨が前方(お腹側)に傾く時は、丁度、頭を倒すような動きなので「うなずき運動」と表現され、逆に後方(背中側)に傾く時は、反対に「起き上がり運動」と表現される事が多いです。
Leeは著書(骨盤帯)のなかで様々な研究論文のレビューを行い、荷重がかかった状態で痛みのない人では、回旋角度が0.4~4.3°、並進運動は0.7mm以下、荷重がかかっていない状態では並進運動の範囲が2㎜以上でるという事を明らかにしています。
以前、千葉大学の解剖研修(白菊会のご好意による)に参加させていただいた時、教授の方から外国の論文で、仙腸関節の動きを計測するのに、実際自分の骨盤に麻酔下でビスを打ち込み、動かして計測したという論文がある、という話を伺っていたので、ぜひ読みたい!と思っているのですが、このレビューの中に含まれているのでしょうか?
まあ、それはさておき今までの話を総合的にみてみると、仙腸関節の動く範囲は平均的に言って、回旋運動は2~3°、並進運動は2㎜前後と考えて頂ければ間違いないと思います。
並進運動に関しては前後方向の一律ではなく、片足で体を支えている時などでは、支えている側の仙腸関節ではやや上下方向での並進運動も起っているようです。
4、仙腸関節の構造、動きから考えて骨盤が開くのかを検討してみる
仙腸関節を輪切りにした図
前回「骨盤の構造」と今回の内容から、今まで世間一般で言われているような骨盤の開きが実際にあるのかを検証していこうと思います。
先ず、前提条件として
1、仙骨は、左右の寛骨の間に台形のような形で楔状に挟まりこんでいます。そのため、構造的に固定されやすいようになっています。
2、仙腸関節面は、凸凹と隆起した形で、仙骨と寛骨がかみ合っていて、摩擦抵抗が高くなるようになっています。
3、筋肉の力(閉鎖力)によってコロセットを締めているようにしめつけられています。
もし、骨盤がチューリップのように開くとするならば、仙腸関節面の前側は捻挫のように伸びてしまわなければいけません。足首の捻挫や、突き指を経験された方は分かると思いますが、じん帯や関節包が急に伸ばされて捻挫すると結構痛いです。したがって、痛みもなく骨盤がパカパカ開くというのはありません。
ただし、女性は分娩時このような関節の伸び方をする場合があります。その場合はやはり、仙腸関節部に特有の痛み方を呈する方が多いです。
骨盤の開き方の可能性としてもう一つあるのは、寛骨が仙骨の関節面に沿って斜め前外側にズレていくと寛骨の前側(お腹の方)は間隔が広がるので骨盤が開くように見えます。
しかし、これも前述のとおり関節面での移動距離は2㎜前後なので、左右の仙腸関節での動きを足しても4㎜程度の動きです。この範囲で寛骨の前側の間隔が広がったり、狭まったりしても外見上はほとんど分からないでしょう。
5、まとめ
骨盤の動きは実に小さいもので、目で見える動きのほとんどは、可動域の広い股関節か腰椎の動きです。実際の動きは、触診で緩み具合などの評価をしていかなければ分かりません。この少しの動きはショックアプソーバーとしての役目をはたします。また、女性の場合はこの関節がないと分娩時に産道が広がらず困ってしまいます。
今回は、解剖学的な視点から正しい関節の動きをご紹介してみました。何かのご参考になれば幸いです。
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