骨盤の歪みの本当の意味
【今回の記事は以前、他のブログ掲載していたものを転載したものです(2015年12月初出)。骨盤伝説シリーズの第5回目。】
今までは、従来言われていた骨盤の開きというものは違うという事をご説明してきました。では、骨盤の歪みというものは本当はどういうものなのか、という事を今回はご紹介していこうかと思います。
1、骨盤の左右対称的な歪み方
「骨盤伝説③~仙腸関節の動き」の項でご紹介したように骨盤の骨自体の動きは大別すると2つの動きがあります。1つは仙骨が前方に傾く動き(うなずき運動)。もしくは反対に仙骨に対して寛骨が後ろへ傾く動き。そしてもう1つは、仙骨が後へ傾く動き(起き上がり運動)。もしくは、仙骨に対して寛骨が前方に傾く動きになります。
これは、日常の動作の中では具体的にはどのような状態になっているかといいますと、寝ている時以外の立っている時や座っている時など重力が骨盤帯にかかっている状態では、骨盤は状態の重みを受けるため締め付ける位置にいます。つまり仙骨は若干のうなずき運動の位置にいます。こうする事で仙腸関節周りのじん帯が緊張し、関節を締め付ける事になり、関節をより安定しやすくなります。
座っている時に、いわゆる尾骨座り(背中を丸めた座り方)をしていると仙骨は後へ倒れたような姿勢になり、起き上がり運動をしている状態になります。逆に立っている時に反り腰になっている人は、仙骨が前方へ傾いている(うなずき運動)状態になっています。
日常的な動作では、うなずき運動、起き上がり運動ともに普通に起ります。したがって、そのこと自体は異常ではありません。しかし、過度にその位置が固定されていると背骨の姿勢全体に影響を与えます。
2、左右非対称な動きでの歪み方
左右が対照的でない歪み方として考えられるのは、片方の仙腸関節では仙骨の前傾(うなずき運動)が起り、もう片方の仙腸関節では仙骨が後傾(起き上がり運動)になっている状態です。仙骨自体はゴムのように捻れるわけではないので、どちらかというと寛骨の方が仙骨に対して動いているような感じです。
これは、関節の動ける範囲での歪みなので、本来、仙骨が前傾したら元に戻るように後傾に動かなければいけないのを、その位置で留まっている事を意味しています。仙骨の後傾側は逆の現象が起っています。
ここで述べているのは、関節の動きに関しての事で、パッと見でそれと分かるような大きな骨盤の歪みは、大抵の場合、股関節上で起きています。
3、骨盤の歪みの見つけ方
これまでの説明は、骨盤の関節内で起こる代表的な歪みのことを示しています。これを骨盤内運動といいます。これに対し骨盤帯全体が全身の位置に対しての異常位置という歪みがあります。これは、骨盤帯が体の前方に移動しているスウェイ・バックや、横へ平行移動しているサイド・シフト姿勢などです。脊椎変形症や側彎症などで顕著にみる事が出来ます。全身の歪みの分類は当院メインサイトの「姿勢とは?」をご覧ください。
骨盤内の関節の歪みというのは、関節自体が脱臼でもして相当グラついでもいない限りは、関節面に沿っての移動の範囲で収まると考えれれます。
じっと静止している骨盤を触って、どっちがどうズレているというやり方は、「骨盤の構造(骨盤の歪みは触って分かるものか?)」でお伝えした通り、先ず左右の寛骨の形が全く同じであるということを前提に行われています。しかし、そのような前提条件である保障はなく、むしろ左右の骨が左右全くの対称的というのは考えずらいと思われます。
したがって、当院では関節の動きの把握を最重要としています。今までの記事の中で骨盤の関節の動きは2mm程度の動きで、とても僅かなもので把握するのは難しい、ということも再三述べてきました。
しかし、全く把握できないものではありません。例えば、盲目の方が字を読む時に使う点字は、健常者が最初触っても区別が出来ません。しかし、慣れてくると字それぞれの区別ができるようになります。それと同じ事が関節の動きの把握でも可能です。ただし、正確を期すためにはいろいろな方法で情報を積み重ねなければいけません。
4、骨盤内運動異常で困る点
骨盤での関節の動きは小さいものなので、必然的に歪み自身も小さいものです。そのような小さい歪みで何が困るのでしょうか?
骨盤の動きは、腰の骨と股関節との間に位置し、力を伝達しながら、ショック・アブソーバの役目を果たしています。つまり、骨盤の歪みは、上体から下肢への力の伝達の不具合につながり、腰痛や下肢の問題を引き起こす可能性があるが困る点です。
体幹の安定性と腰痛の発生の関係性は、現在、議論が盛んに行われている分野で、関係があることに疑う余地はありません。しかし、体幹の安定という定義自体が、まだ確立されていないので難しいところでもあります。その中でも骨盤は体幹安定に関連が深いので、ここは重要視されています。
まずは、本来あるべき関節の動きを取り戻し、偏った位置に固定されているようならそれを解消する事には意味があります。
5、まとめ
何度も繰り返し述べているように、よくメディアで言われているような骨盤の開きというようなイメージとは程遠いものです。今回は、関節の動きから見た歪みという概念について解説してみました。
また、別の機会には体全体に対する骨盤帯の位置の異常を取り上げてみたいと思います。こちらの方が見た目を良くするには重要だったりします。
では、今回はこの辺で。
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