感染症対策としてのマスクの重要性

え~、今更?と思われる方も多いと思います。

しかし、未だにマスクなんか効果ないとか言っている人がいます。これだけ科学的なデータが揃って、しかも何度も今までその有効性を紹介されているにも関わらず、です。

この様な人たちは、結局、いくら分かりやすく説明してあげても、説明自体を聞こうとせず、自分の思い込みたい事に優位に働く情報のみをチョイスし取り込んでいるので、物事を客観的に観ることが出来ません。そしてこのような人たちは一定数必ず存在します。

そしてさらに質の悪いことに、これらの人々はSNSで自分の主張を拡散することに固執します。

また、日本のマスメディアも悪質なものが多いです。大手新聞社でもまるでスポーツ紙やゴシップ紙の様な内容を平気で掲載しているものがあります。

日本人は国民性として騙されやすい民族とされています。最初に多くのデマ情報に接触してしまうと、それを鵜呑みにしてしまう人が多くなってしまいます。

そこで今回、改めてマスクの有用性について解説していきます。当院では、科学的見地と現在のコロナ窩の終息がまだ見えないという現状から、ご利用クライアント様には院内でのマスク着用をお願いしています。そのための理由をここで明らかにしていこという意図です。

 

基礎的な感染症対策の情報

まず、一般の方はどこから健康関連の正しい情報を得ればいいかという問題ですが、多くの方がテレビや雑誌、youtubeやSNS(twitter/Xなど)などから情報を得ています。しかしこれらの情報はかなり偏った物の見方をした人が発信した情報である事が多々あります。

まずは、国の機関(厚生労働省 )が発信している情報をチェックすることが先決です。少なくても国の活動が崩壊しないように、客観的及び包括的な見方でデータを収集・解析を行っていて、公平性があると考えられるからです。

https://www.youtube.com/watch?v=WNQ7Y9d4D4k

こちらは、2009年に発表されたインフルエンザに対する感染予防を説明した動画ですが、コロナに対しても同じです。一般的な感染対策は上記の動画が分かりやすいのでそちらをご覧いただければ宜しいかと思います。

マスクが飛沫を防ぐ様子(上記動画より)

 

今回はさらに掘り下げて、研究の紹介をしていこうと思います。

 

マスクに否定的な文献

公正を期すために、まずはマスクの効果に否定的な論文からの紹介です。

 

【新型コロナウイルス感染症時代のフェイスマスク: 健康仮説】

Facemasks in the COVID-19 era: A health hypothesis

出典;Med Hypotheses. 2021 Jan; 146: 110411.Published online 2020 Nov 22. 

《概要》

フェイスマスクの有効性を裏付ける科学的証拠は不足している。生理学的、心理的、健康への悪影響は確立されている。フェイスマスクは安全性と有効性を損なうため、使用を避けるべきであるという仮説が立てられる。

 

2021年1月にMedical Hypotheses(医学仮説)という医学雑誌に掲載された論文で、著者のBaruch Vainshelboimは、米国スタンフォード大学の心臓外科医という肩書の医者です。

これは反マスク界隈では、もてはやされた論文です。

ところが、同年の7月にMedical Hypotheses誌から掲載の撤回されてしまいました。これに反マスクの人々は政治的圧力で掲載が取りやめられた、と騒ぎ立てましたが、これに対しMedical Hypotheses誌側から明確に撤回理由が述べられています。

「新型コロナウイルス感染症時代のフェイスマスク:健康仮説」の撤回通知

当誌は、医学および関連する生物医学科学における革新的で、しばしば破壊的なアイデアを議論するフォーラムとして機能している。ただし、当社の厳格な編集方針は、仮説を推進するために誤解を招く引用や不正確な引用を掲載しないことである。

著者の仮説は誤解を招くものであり、内部調査により、通常の厳格な基準を満たしていなかったことが判明した。その点を次にあげる。

1. 既存の科学的証拠を広範に検討した結果、正しい認定を受けて承認され、ガイドラインに従って着用されたマスクは、新型コロナウイルス感染症の感染を効果的に予防できることが明確に示されてる。

2.記事は誤った引用しており、出版された論文を選択的に引用している。参考文献 16、17、25、26 はすべて誤って引用されてる。

3. 表 1. 著者が作成した、フェイスマスク着用の生理学的および心理学的影響とその潜在的な健康への影響。表内のすべてのデータは未検証であり、いくつかの推測的な記述がある。

4. 著者と所属機関とは2016年に関係を終了しており、著者情報が食い違う。

 

上記を読むと、信用に値しない記事であるという事が分かりますね。

もう一つ、日本からの反マスク論文がpubmedの検索でヒットします。そちらもご紹介します。

【日本のパンデミック中の子どもの健康政策から得た教訓】

Lessons from the health policies for children during the pandemic in Japan

出典;Front Public Health. 2022; 10: 1015955.Published online 2022 Oct 6.

《概要》

新型コロナウイルス感染症と闘う公衆衛生対策として、「家にいよう」「黙食」「マスク着用」が全国的なキャンペーンで奨励された。日本では、食事中の食育の利点についてはこれまでよく研究されてきたが、「黙食」ルールはこの食育に真っ向から反する可能性がある。また、子供たちに一日中マスクを着用することが奨励された。臨床研究、特にランダム化対照試験の結果では、マスクの予防効果が限定的であることが、一方で、マスクによるマイナスの影響もさまざまな場面で報告されている。

 

2022年にFront Public Health誌掲載の京都大学大学院農学研究科研究員、正箱 尚久氏の記事です。

この記事の中では、マスクは効果がないと主張しています。

ただ、マスクに関する代表的なRCT(ランダム化比較試験)として挙げられた文献の多くは、2010年代のもので、COVID-19が発生した2020年代のは3編のみです。

その内訳は、1つはメッカ巡礼でのマスク着用、もう1つはバングラディッシュ農村部のもの、最後はデンマークで野外活動する人を対象としたものです。バングラディッシュのものはマスク効果を認めています。

そこで、現時点(2024年)でpubmedで「mask covid」で検索してみると、多くのマスクの有効性を示唆する論文が出てきます。その時の最善を選択するこためには、最新の情報・より多くの情報を得るようにすることで信憑性があがります。

この論文に関しては、あまりSNS上では普段マスク推奨派である医師のアカウント勢から反対意見が出ておらず、スルーしているようです。

しかし、京大って宮沢孝幸准教授や、藤井聡教授など異端的で反医学的主張する人が多い気がしますが、何故なんでしょうか?

 

マスクが有効とする文献

まずは、厚生労働省から公表されている

マスク着用の有効性に関する科学的知見

に端的に表されているので、そちらをご覧ください。

次に各文献をご紹介します。

 

【SARS-CoV-2 の空気感染予防におけるフェイスマスクの有効性】

Effectiveness of Face Masks in Preventing Airborne Transmission of SARS-CoV-2

出典;mSphere. 2020 Sep-Oct; 5(5): e00637-20.

《要点》

・人間の呼吸や咳によって生成される感染性SARS-CoV-2を含む飛沫/エアロゾルの空気感染シミュレーターを開発し、感染性飛沫/エアロゾルの伝播性と、さまざまなタイプのフェイスマスクの伝播を阻止する能力を評価した。

・綿マスク、サージカルマスク(SM)、N95マスクはすべて、SARS-CoV-2の感染性飛沫/エアロゾルの伝播に対して防御効果があり、ウイルス拡散者がマスクを着用した場合に防御効率が高くなることが判明した。

・吸入側がSMを着用した場合、ウィルス吸入量が半減する。排出側がマスク着用すると半減、両者マスクすると6~7割減となる。

 

東京大学医科学研究所の研究グループの2020年発表の研究で、この論文については日経新聞のwebサイトで「本物のウイルスでマスクの効果試した 結果はやはり…」という記事で一般向けに解説されているものがありますので、そちらをご覧いただいた方が分かりやすいと思います。

サージカルマスクとは、一般的な不織布のマスクに相当します。

マスク着用でかなりウィルス吸引量は減りますが、完全にブロックすることは出来ないので、やはり換気は必要とのことです。

 

【マスクの着用とCOVID-19との関連性】

Airborne transmission of COVID-19 and the role of face mask to prevent it: a systematic review and meta-analysis

出典;Int J Environ Res Public Health. 2021 Sep; 18(17): 9131.

《要点》

・保健所が感染症法に基づいて全国で積極的疫学調査を実施し、新型コロナ感染症患者の濃厚接触者の追跡とポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査を実施している。この調査により、感染者と接触した人の接触状況、マスク着用行動、PCR検査に関する情報を収集することができた。

・広島県内の患者の分析対象者は計820人で、そのうち53.3%がマスクを着用していると回答した。マスク非着用者の感染率は16.4%、マスク着用者の感染率は7.1%だった。マスクを着用していた人の感染率は、マスクを着用していない人の0.4倍だった。(RR = 0.4、95%CI = 0.3-0.6; 調整後 RR = 0.6、95%CI = 0.3-0.9)。

 

広島大学研究チームによる2021年発表の研究です。

結論は「広島県の保健所における積極的疫学調査を通じて収集されたデータの分析により、マスク着用者はマスクを着用していない人に比べて新型コロナウイルス感染症に感染する可能性が60%低いことが明らかになった」とのことでした。

 

【アメリカ全国のマスク着用率と新型コロナウイルス感染率】

Mask adherence and rate of COVID-19 across the United States

出典;PLoS One. 2021; 16(4): e0249891.

《要点》

・50州すべてとコロンビア特別区(DC)について、一般大衆に対するマスク着用政策と、それを遵守している住民の割合を、州レベルのデータを使用し抽象化した。 これらのデータは2020年4月から9月までの月ごとに抽出され、翌月(2020年5月から10月)の新型コロナウイルス感染症発生率への影響を測定した。

・月間の新型コロナウイルス感染症感染率(2週間の一人当たりの感染者数)が住民10万人当たり200人を超えると、高いと考えられた。

・9月まで一般国民に対するマスク着用政策を実施していない15州のうち14州では、高い新型コロナウイルス感染率が報告された。マスク着用率が75%以上の8州のうち、高い新型コロナウイルス感染率を報告した州はなかった。

・前月のマスク遵守率が75%以上の州の平均新型コロナ感染率は10万人当たり109.26人だったのに対し、マスク遵守率が低い州では10万人当たり249.99人だった。

 

アメリカ・マサチューセッツ州のボストン大学公衆衛生大学院、中国医学科学院および中国北京連合医科大学の研究チームによる2021年発表の論文です。

結果は「マスク着用の遵守率が高いことが、新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑える重要な要因である可能性があることを示唆している」となっています。

 

 

【COVID-19の空気感染とそれを防ぐためのフェイスマスクの役割:体系的レビューとメタ分析】

Airborne transmission of COVID-19 and the role of face mask to prevent it: a systematic review and meta-analysis

出典;Eur J Med Res. 2021; 26: 1.

《要点》

・2020年10月まで、PUBMED/MedlineおよびGoogle Scholarで文献を検索し、合計7,688人の参加者を含む 4つの論文がこのメタ分析に採用された。

・結果は、フェイスマスクの使用により感染が大幅に減少することを示した(P<0.001)。

 

イラン・ゴナバード医科大学の著者の2021年の研究です。フェイスマスと感染に関する論文のメタ分析です。

 

追加

COVID-19に対するフェイスマスクの証拠レビュー】(Proc Natl Acad Sci US A. 2021 1 26; 118(4): e2014564118 )

というマスクの有効性についてのレビューがあるのですが、ボリュームがあるので読む根気がある方は参考にしてみて下さい。

また、「ワクチン接種したから、もうマスクいらん!」と思われている方は、こちらのレビューをお読みください。

ワクチン接種とマスク着用を組み合わせることで、COVID-19のパンデミックを阻止できるのか?】(Microb Biotechnol. 2022 Mar; 15(3): 721–737.)

このレビューも長いので根気のある人向けです。簡単に言うと「コロナ・ワクチンの接種だけでは感染は防ぎきれないので、マスク着用の相乗効果を用いるべき」という事です。

 

まとめ

新型コロナ感染症に対するマスクの有効性を調べた研究をご紹介してきました。

新型コロナウィルスの厄介なところは、発症の2日前くらいから人に移す能力があり、気付かない間に周囲にウィルスをばら撒いてしまうという点です。

患者がマスクをしていると排出量が半分くらいなり、周囲の人もマスクをしていると7割くらいカット出来るとされています。

ですので、発症の有無にかかわらずマスクが必要となります。

人によっては、コロナに感染しても大した事なく済む人もいますが、後遺症で苦しむ人もいます。特に当院利用のクライアント様では、健康面で虚弱な方が少なくありません。

従って当院では院内でのマスク着用を厳守でお願いしています

コロナ窩はまだ終わっていませんし、なんなら第10波として増加しています。されに今回はインフルエンザも同様に増えています。しかも世の中では処方薬不足が深刻化しています。

この様な状況の中、今までご紹介してきた研究成果を考慮すると、マスクをしないという選択肢はありません。

ただ、これは野外の活動や、密集度が全く低いところでは話は別で、それは状況に合わせて適応していけば良いだけのことです。

次回は、マスク着用の際、酸欠になると訴えている噂があるので、その点について検証していきます。

今回はこの辺で。

 

この記事がいいなと思えたら、facebookやtwitter(現X)でつぶやいていただけると、本人のやる気につながりますのでお願いします。。。

Follow me!

お問い合わせはこちらです

    お名前 (必須)

    メールアドレス (必須)

    題名

    メッセージ本文

    メッセージの内容はこれでよろしいでしょうか?

    OKでしたらチェックして送信ボタンをクリックして下さい。