めまい感は、バランスを保てないような感覚に陥り、吐き気などの不快感を催します。バランスをとるためには前庭器官(三半規管・耳石器)とそこから出る神経、その情報を受け取る小脳、脳幹、視床、大脳皮質などの働きや、眼球の運動調節、バランスを保つための身体の位置情報などが正確に働く必要があります。これらを障害する要因はかなり多岐にわたります。

ここでは、当院で対処できる「めまい」と、できない「めまい」を明らかにし、さらに当院で対応できるめまいについては、さらに当院の事例や、詳細について述べている関連ページへのご紹介をおこなっています。

 

目次

めまいの種類

「めまい」は大きく分けると3種類あります。

・景色がグルグルと回るように見える回転性のめまい。

・自分自身が揺れているようなフワフワとした感覚のめまい。

・瞬間的に墜ちるような感覚の立ち眩み感。

それぞれに対応しているめまいを引き起こしている障害部位が存在し、それらは検査で特有の反応を示します。

バランスはどのようなメカニズムで保たれているかを知れば、どこが障害されて自身のめまい症状が引き起こされているのかが判ってきます。次にバランスを保っている仕組みをご説明します。

それ以前に一番大事なことを先にお断りしておきます。それは…

急に起こった「めまい」で、「めまい」症状以外の手足の感覚異常や麻痺、眼球運動の異常、上手く喋れなくなったなどの症状がでた場合は、命に関わる病気の可能性があるので早急に医療機関に受診する必要があります。

このことは非常に大事なので、全てに優先して実行してください。

 

バランスを調節しているところ

身体のバランスは主に、前庭系、小脳、体性感覚によって支えられています。それらを個別に見ていきましょう。

 

前庭系


(c)フリーメディカルイラスト図鑑

前庭神経の回路には、鼓膜の奥に位置する半規管と耳石器と、そこから脳幹にある神経核に情報を送る前庭神経とで成り立っています。平衡感覚器である半規管と耳石器は、音を感じる器官である蝸牛器とくっついて存在し、側頭骨という耳がある部位の頭蓋骨の中に存在しています。これを骨迷路といい、全部リンパ液で満たされ、リンパ液が交通しています。

鼓膜を通してこのリンパ液が音の振動を伝え、蝸牛器で音を察知します。半規管は3方向あり、水平方向の向きを察知する器官、斜め前の方向を察知する器官、斜め後を察知する器官があります。これらがそれぞを満たしているリンパ液の流れを察知し、頭の方向の情報を伝えます。耳石器は、耳石といわれるカルシウムの砂がゼリー状の物質にオブラートされて存在し、その砂の傾きで頭部の傾きや動くスピードを察知します。

骨迷路からの平衡感覚器からは前庭神経が出て、蝸牛器からは蝸牛神経(聴覚神経)が出て、2つが一緒になって脳幹にあるそれぞれの神経核(神経の大本/神経細胞体があるところ)に連絡します。この前庭神経と蝸牛神経を合わせて内耳神経といいます。

前庭神経核に伝わった情報はさらに、次の4つに連絡します。

①小脳

前庭神経から来た情報、体から来た情報(体性感覚)、視覚情報を統合し、体のバランスを保つように運動調節を行う。

②眼球を動かす神経核

平衡感覚と連動して、眼球が垂直位を保てるように調整する。

③頸部の筋肉を制御している神経

頭部が垂直位に保てるよう首の筋肉が働く。

④自律神経の嘔吐中枢

 

小脳系

小脳は脳幹の後ろ側についていて、丁度、後頭骨のあたりに位置しています。運動調節や学習記憶を行っているほかに、姿勢制御やバランス調整をしています。アルコールを摂るとフラフラしてしまうのは、小脳の働きがアルコールにより悪くなってしまうためです。

小脳へは前庭系からの情報や、脊髄からの体の感覚情報(体性感覚)、大脳からの運動調節に関する情報などがはいってきます。また、それらへ運動の調節を行うための命令を送り出しています。

前庭系が問題でめまいが起こる場合、時間の経過とともに小脳が感覚のズレを補正して症状が和らいでくることが多いですが、小脳が障害された場合それがありません。小脳の障害は脳血管の障害や腫瘍で引き起こされます。

小脳の障害で引き起こされるめまいは回転性めまいと浮動性めまいの両方とも可能性があります。多くの場合、めまい以外の症状を伴うことが多いですが、稀に局所的な小脳出血では、めまい以外の症状を出さないものがあるので注意が必要です。

 

体性感覚

関節・皮膚・筋肉には身体の位置を知らせる神経があります。それをまとめて固有受容器といいます。例えば、目をつむったまま手を上げても、手がどこにあるかは自覚することができます。それはこの固有受容器からの情報によります。この情報は小脳に入り、身体のバランスを取るための運動神経の調節に役立たせられます。そのため目をつむったままでも歩くこともできるのです(盲目の人のように)。

めまいが起こっていてもこの体性感覚や小脳機能があれば、壁伝いなどをして、辛うじて歩いて行くことができます。しかし、体性感覚や小脳機能が失われると全く歩くことができなくなってしまいます。これはめまい時の中枢性の障害か、末梢性の障害かの判断材料の一つとなります。

体の位置の情報は脊髄を通り、脳幹を経由し、嗅覚以外の全ての情報が集まる視床を経由し、大脳の体性感覚野に達します。一部は脳幹から小脳へ連絡し、脳幹と共に姿勢反射の命令を出し、体のバランスを保つため筋肉の緊張度合いを調節しています。

 

脳幹

脳幹は下から延髄、橋、中脳とあります。橋の裏側には小脳が存在しています。前庭神経からの神経線維、小脳からの神経線維、体性感覚を伝える神経線維などが通過しています。また、神経線維の本体である神経細胞体の集まり(核)も存在しているところです。したがって、ここが障害されるとめまい以外に様々な症状が発症します。代表的なものとして眼球運動の障害、構音障害(上手くしゃべれない)、手足の感覚障害や運動障害などを併発します。

 

 

回転性めまい(グルグルめまい)

回転性のめまいは多くの場合、前庭神経系の問題で症状を生じます。この神経回路のいづれかで障害を受けると、前庭神経核からは頭部の平衡を保つために眼球と連動しているので、眼球の動きに障害がでます。そのため景色が回って見えるようになるのです。

前庭神経系に障害をもたらす原因としては次のようなものが代表的です。

 

良性発作性頭位めまい

耳石器にある耳石がはがれて半規管に入り込み、バランスのセンサーの邪魔をします。良性発作性頭位めまいは回転性めまいの最も多い原因で、60%を占めるといわれています。

耳石が剥がれる明確な原因はわかっていませんが、外傷などの衝撃や、加齢によるものだと考えられています。良性発作性頭位めまいは、めまいを引き起こす頭の位置が決まっており、それを改善するための運動療法も確立されています。カイロプラクティックでの適応となり、当院でも最も得意とする疾患です。

 

メニエール(氏)病

上記のように前庭神経回路の感覚器の部分は全部繋がってリンパ液が交通しています。このリンパ液が過剰に作られてしまうのがメニエール病です。半規管はリンパの流れを察知することで頭の動きを察知します。溢れかえったリンパ液でかき乱され、センサーがデタラメに反応し、眼球が回ってしまいます。

同時に聴覚も障害を受けることが多いです。突発性難聴は高音域が障害されやすいですが、メニエール病の場合は低音域が障害されやすくなります。

急性期では回転性めまいが強いので、2~3日は安静にしている方が良いでしょう。その後、浮動性めまいが続くことがあり、これがなかなか抜けないという事で当院をご利用になる方が多いです。こちらも当院で得意としています。

たまに最初から回転性でなく浮動性めまいを発症するメニエール病もありますので、鑑別が必要です。また、片方が発症した後、もう片方も発症することがある(30%くらい)ので、体調を整えておくことは大事と考えます。

 

前庭神経炎

風邪などのウィルス感染により神経が炎症を起こしたと考えられています。大抵の場合、めまいを起こす 7~10日前くらいに風邪を引いた既往があります。多くが前庭神経と蝸牛神経が同時に障害されてしまうので、聴覚障害も併発します。しかし聴覚障害を起こさない場合もあり、文献によっても記述はまちまちです。

発症から3日くらいは強いめまいに襲われますが、徐々に和らぎ、2週間~1ヶ月間くらいでだいぶ治まります。神経が炎症により変性してしまう可能性があるため、初期では薬物治療を優先し、炎症のコントロールを行っていく方が良いと思われます。前庭神経からの情報は小脳で補正されるためめまい感は残りづらいですが、聴覚神経の変性は補正が効かないので、聴覚障害が残る事があります。

 

 

浮動性めまい(フワフワめまい)

片方の前庭神経系が障害された場合は回転性めまいですが、それが両方障害されると浮動性めまいになります。しかいし大概のフワフワとした浮動性めまいは、前庭神経などの末梢神経系の問題ではなく、中枢神経系(小脳、脳幹など)の問題となる場合が多いです。

中枢神経系の問題の場合は、大別すると3種類あります。1つは自律神経不調。もう1つは血管障害。最後に腫瘍となります。

自律神経が調子悪くなると、脳幹に血液を供給している動脈も調子が悪くなり、そこから中枢神経系の問題を生じます。また、鞭打ち損傷や、極度の肩こり・首こりなどにより首の筋肉が緊張していると、頭部へ血液を供給している動脈周囲の自律神経を刺激し、交感神経の興奮により血管収縮が起こり、血流不全が引き起こされめまい感を発症させることがあります。自律神経系の不調に対しては、カイロプラクティックは適応であり、当院に「めまい」を訴えられてご来院になる方の原因で最も最も多いと推測されるものです。また、当院の得意とする分野でもあります。

血管障害の場合、疫学的には高齢者に起こる割合が多く、いわゆる動脈硬化や血栓症などで血管に障害が起こるリスクが高い人々に見られます。しかし、若年者でも外傷や原因不明で起こる事があり注意が必要です。急性の場合は出血性であり早期に救命にかかられる事が必要です。

逆に腫瘍による圧迫からくる脳神経の機能不全で引き起こされるめまいでは、徐々に症状が進行していきます。腫瘍による小脳圧迫や、聴覚神経腫による前庭神経圧迫が代表的な病気です。

血管障害や、腫瘍圧迫などの中枢神経障害では、一般的にはめまい以外の付帯症状が起こるので、それらの有無を見極めるのが大事です。これらの疾患は、カイロプラクティックの適応外となります。

 

立ちくらみ(クラクラめまい)

寝ている状態や座った状態から立ち上がる際、フワッとして自分の位置を失う感覚に襲われたり、落ちるように感じられるのが起立性低血圧です。重力によって足の方に溜まった血液を上の方に押し上げる機能が衰えると起こります。

若年性の場合、血管の調整を行っている自律神経の不調や、貧血のために起こる事が多いです。遅延性起立性低血圧といい、立ち上がった直後でなく、10分ほど経過してから症状が出るものもあります。若年性の起立性低血圧はカイロプラクティックの適応となります。

高齢者における立ちくらみは、循環器の問題から来る場合が多くあります。動脈硬化などによる血管の狭窄や、自律神経不調による血管調整の不調によります。この場合は、心臓に問題を抱えていることもあり、その他の病気による合併症や、服用中の薬による副作用の場合もあるため、医療機関での処置を第一選択にとります。

 

 

ふらつき

歩行時にフラフラするという感じをめまいと表現し、来院される方もいます。

高齢者以外でふらつく場合、中枢神経(脳や脊髄)に病気がある可能性があるので、一度、脳神経科や神経内科を受信される事をお勧めします。

高齢者の場合、体性感覚が衰えている場合が多く、足からの感覚が鈍くなっているためふらつく事があります。それに加え、下半身の筋力低下や、膝や足、股関節の変形が合併し、ふらつきとなって現れます。この場合、関節の調整や筋力アップの運動、バランストレーニングの実施によりふらつき感の軽減が大いに期待できます。カイロプラクティックも貢献できる疾患です。

 

 

当院の症例からのめまい

実際に当院で遭遇した「めまい」症例のなかから一部をご紹介します。一般的に見られる良性発作性頭位めまいや、メニエル病からのめまい、緊張性頭痛の症状の一要素としてのめまいなどの症例は、個別に症例報告の詳細が下記のリンク先にありますので、ここではそれ以外のめまい症例を掲載しています。

妊娠中のめまい

妊娠中にめまい感に襲われることはよくあります。原因としては低血糖状態からくるめまいです。妊娠中は胎児へ血糖を供給するため、母胎の血糖が足りなくなる可能性があります。特につわりが酷い方の場合、食事量が減るのでリスクが高まります。

別の可能性としてはホルモンバランスが変化するため、血圧調整が上手くいかないためにめまいが引き起こされることがあります。

これら2例に対しては、カイロプラクティクの処置が身体をリラックさせる効果から、つわりの辛さの軽減や、自律神経調整の補助として働き、めまい感の軽減につながります。

ごくまれに、妊娠後期に向かって分泌が増量する、組織の柔軟性を高めるホルモン(リラキシン)のため椎骨動脈の離解がおこることがあります。一応、その危険性も念頭に置いておく必要があります。

 

産後のめまい

産後からめまいがしてきたというご相談もよくお聞きします。一番多いのが慣れない育児からの疲れや、睡眠不足からの体調不良によるものです。産後うつからめまいを感じることもあります。

産後うつの場合は、まず医師にかかり正しい診断をしてもらうことを最初にお勧めします。「うつ」の診断が下されるのと無いのでは、周りの対応が違ってきます。「うつ」の診断がないと単なる疲れと思い込み、無理を重ね症状を悪化させることがあるからです。

いずれの場合も身体のバランスを整えることにより、身体へかかるストレスを減らし、筋肉を弛緩させリラックスを得るなどの処置をすると、ほとんどの場合めまい感の軽減、および消失に至ります。

 

心臓からのめまい

40代男性のクライアント様の訴えで、仕事の作業中にフワフワするという症状でご来院されました。耳鼻咽喉科や内科を受診するも原因不明でした。めまいの検査(眼球運動、小脳系、前庭系、体性感覚など)を行っても特に異常は見られませんでしたが、心拍をはかってみると40台しかありませんでした。

脈拍の正常値は60~100/毎分ですが、多くは60~80台で収まります。60以下の脈拍は徐脈といい、心臓の機能が正常に働いていない不整脈や、高血圧、甲状腺機能低下、薬剤性などが原因として挙がります。脈拍低下に伴い全身への血流の低下がおこり、脳への酸欠からめまいを引き起こします。

マラソン選手のスポーツ心臓でも徐脈になりますが、この方は運動習慣はなく、服用してる薬もありません。したがって徐脈性不整脈の可能性があるので、循環器科の受診を勧めました。

徐脈性不整脈はたいていの場合、経過観察で終わることが多いですが、程度が酷いと失神してしまうことがあります。仮に車の運転中に失神してしまうと事故を引き起こすことになります。また階段の上り下り時の失神は大怪我につながる可能性があります。このような場合はペースメーカーなどの外科的処置が必要な場合がありますので、当院では医療機関での受診を推奨しています。

 

耳鳴りのするめまい

当院で遭遇する耳鳴りを伴うめまいでご来院されるクライアント様は、メニエル病や前庭神経炎の延長として、フワフワとした浮動性めまいで来られる方が大半です。回転性めまいが収まり、続発性に浮動性めまいが起こります。当院では主に50~70代の方がほとんどで、男女差はありません。聴覚障害は難聴より、耳鳴りを訴える方が大半になります。

このような場合、身体のバランスを整えること、バランス訓練をすることにより大半の方はめまいの消失に至ります。ただし、耳鳴りに関しては回復する方と、変化しない方は半々程度の割合になります。

 

 

当院でのめまいの対処

まず、「危険なめまい」かそうでないかの鑑別を行います。医療機関の受診が優先的に必要と思われるめまいも同時に判断し、必要と思われるアドバイスをさせていただきます。

すでに医療機関での受診を済まされている方、カイロプラクティックが適応の方へは、当院独自のめまいに関する検査から行います。

めまいの原因は多岐にわたるので、検査は時間がかかります。長い場合、50分くらいかかります。初回時にしっかり検査をし、施術の方針に目星をつけておくことは非常に重要で、これを行わずマニュアル的な施術を続けていくことは不必要に施術期間をとってしまい、あげくの果ては悪化させる可能性があるからです。

検査は、平衡感覚系(眼球運津、視野、平衡器、前庭神経)、小脳系、体性感覚系、自律神経系などを見ます。

2回目以降はさらにフォローアップとして筋機能、脳活動などの特殊検査も場合によって加えていきます。

これらはすべて、理学検査、神経学的検査、カイロプラクティック的検査からなります。

これらの検査結果から正しく機能していない部分を割り出し、その修正をおこなう施術を行います。併せて機能訓練を実施します。また、これらの検査結果は、改善度を測るための指標にもなります。

めまいの改善にはセルフ・エクササイズ(自宅での訓練)を多く含みます。繰り返しご指導いたしますので、正確に実施することをお願いします。

 

 

当院でのめまいに関する症例報告

当院で実際に遭遇・処置をさせていただいたクライアント様からの症例の詳細です。

 

 

 

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