脳震盪・軽度外傷性脳損傷は交通事故・スポーツ外傷・暴行・転倒など日常的なことで起こります。最近の研究・医学の進歩により少しのダメージでもより大きな障害につながることが判っています。
目次
脳震盪とは?
脳震盪とは、頭部に急激に力が加わり、一時的な記憶障害や意識障害を起こすことです。この場合、従来では組織の損傷は伴わず、障害は一時的で、回復するものとされていました。
日常では、コリジョン(衝突)スポーツと呼ばれるラグビーや、アメフトで起こりやすく、また柔道やボクシングなどの格闘技や乗馬中からの落馬でも多く見られます。
実際のスポーツの現場では、プレー中に頭部に激突するようなことがあった時、記憶障害も無く、頭痛、めまい、ふらつき、吐き気などの症状はあっても意識がはっきりしている場合は、そのまま復帰し、プレーを続行することが出来てしまうことがよくあります。
しかし、脳の内部ではこの時、血流の調整が乱れてしまい、脳神経の働きが上手くいかなくなると考えられています。また、神経同士の連絡を行っている神経伝達物質の放出や連絡が正常に働かなくなります。
この状態が回復する前にプレーに復帰し、再度、頭部へ衝撃を受けると脳の血管が腫れ、脳浮腫と呼ばれる状態になり、プレー後に突如、昏睡状態になることがあります。これをセカンド・インパクト症候群と呼ぶます。
セカンドインパクト症候群については当blogにて記事を掲載しています。
→→→脳震盪とカイロプラクティック
セカンドインパクト症候群は多くは無い症例ですが、致死率が50%と高く、生存者も後遺症に悩まされる、という事なので注意が必要です。
出展;wikipedia
軽度外傷性脳損傷
車の事故による鞭打ち損傷に引き続き、後発的に出るさまざまな症状の原因としてよく議論に登ります。
出展;wikipedia ヒト脳を第三脳室の真ん中で冠状断した図。黄色で示す部分が脳梁。(wikipedia解説より)
大脳皮質は、脳の表層の部分で、、脳の高次機能と呼ばれる、知覚、随意運動、思考、推理、記憶などを司どっています。その下は、白質と呼ばれる連絡繊維がぎっちりつまっていて、中心部には脳梁(のうりょう)と呼ばれる左右の脳を繋ぐ繊維束の連絡路があります。さらにその奥には脳幹とよばれる生命活動・維持を司っている部分があり、内臓・血管からの情報を受け、調節命令を伝える自律神経系のコントロールと、体の筋・骨格系の情報や操作の情報を伝達の中継や調整を行っています。また、頭部にある目や鼻や耳などの特殊感覚の神経の出所にもなっています。
鞭打ちの状態の時に、頭部が前後・左右や回転がかかった状態で揺さぶられ、まず脳の表層の大脳皮質が損傷し、より衝撃が強かった場合、その衝撃波はさらに深部の大脳白質に伝わり、さらに強いとさらに深部の脳梁や脳幹に伝わっていくと考えられています(求心性連鎖説)。
そして、衝撃を受けた脳神経細胞は、数時間~数日をかけ神経組織の変化や壊死、活動低下を起こし、脳の働きの低下を招くと考えられています。特に神経細胞で障害を受けやすいのは、細胞体から触角のように伸びていて、電気信号を次の神経細胞に伝えている、軸索と呼ばれる繊維部分です。
出展;wikipedia
この様に、交通事故で起こる鞭打ち損傷後、さまざまな不定愁訴が起こる場合、従来ですと頸部の損傷から起こると言われていましたが、現在では脳損傷から引き起こされている、と考えられるようになってきています。
軽度脳損傷の症状
脳震盪は軽度外傷性脳損傷のカテゴリーに入ります。軽度外傷性脳損傷では、受傷直後は、意識障害が起こらない場合も多く、あった場合でも数秒から数分間の短時間です。
その後に大脳皮質損傷による影響として、高次機能障害が出ることがあります。大脳皮質は、記憶・理解・注意・集中・遂行能力・性格などを司っているので、これらに異常が生じます。それは、ひどい物忘れ、注意力の欠如、注意を持続できな、本やテレビを見ていても内容を理解できない、言葉が上手く喋れなくなる、などです。
また、大脳皮質には体性感覚という体からの感覚情報が到達し、体を動かそうとする命令を発するところでもあります。したがって、それらに影響が出る可能性もあります。また、大脳の後ろ下に位置する小脳が機能低下を起こすと、バランスをとったり、運動の調節が難しくなります。
これらの関係で、手の震えや動きがスムーズに行えなくなります。ひどい場合は、手足の麻痺に陥ります。
頭部には特殊感覚と呼ばれる視覚、聴覚、味覚、平衡感覚、嗅覚などがあり、これらも脳から神経が出ているので、これらの感覚の低下や異常が出ることも多くあります。
これらのことから症状としてよく見られるもの挙げてみると
・頭痛
・めまい、吐き気、耳鳴り
・目のかすみ、ぼやけ、焦点を合わせずらい
・バランスが取りずらい、ふらつく
・力が入りずらい、ふるえ
・不眠、極度の疲労感
・注意力低下、理解力の低下
・記憶力の低下
・情緒不安定
など多彩な症状がみられます。
脳脊髄液減少症について
脳から出た脊髄神経という体を支配している神経の束は、背骨の中を通って、それぞれの背骨の間に開いている穴から枝分かれして骨の外に出、それぞれ手や足の筋肉や内臓、血管などに行き、目的のモノを支配しています。
この脳や脊髄を保護して、一つなぎとなり覆っている硬膜という膜があります。そして、この膜の中は脳脊髄液と呼ばれる液が満たされていて、脳神経の栄養を運んでいたりします。脳脊髄神経はこの液の中に浮いている状態になっています。この膜自体に傷が入ったり、膜と神経との境目のところに隙間ができたしまい、中の脳脊髄液が漏れてしまうと、液の量が減ってしまい、浮かんでいた脳が下へ下がってきてしまいます。すると、頭蓋骨の中で脳を上に吊り上げていた部分に負荷がかかり、頭痛を引き起こします。
また、脳脊髄自体も負荷がかかり、めまい、耳鳴り、吐き気などの自律神経症状や、腰痛・頸部痛などの硬膜症状でます。
脳脊髄液減少症もまた、交通事故の鞭打ちや転倒などの頭部外傷により、硬膜が傷つくために引き起こされると考えられています。
脳脊髄液減少症と軽度外傷性脳損傷とは症状が非常に似通っていますが、脳脊髄液減少症は、重力がかかって脳脊髄液が引き下げれれると起こるので、寝ていると症状が軽減し、起きると悪化します。また、実際に液が漏れていることが画像診断でも確認できます。
治療法としては、液が漏れている部分をブラットパッチと言う自分の血液を注入し、かさぶたの様にして蓋をしてしまうことで液漏れを防ぎます。
脳脊髄液減少症の直接の原因は、脳脊髄液が漏れていることなので、もれている部分を塞ぐのがもっとも効果的です。カイロプラクティックの手技で、漏れている部分を直接的塞ぐ様な手技は、存在しません。基本的に手技で行われる事は、固まっているところや、動きが少ないところを緩ませてやる事がメインとなっているからです。
カイロプラクティックで行えることは、体の神経機能を整え、自己修復力を促すことで、ご自分の体で治せるようにすることです。したがって、体液の循環を正常化するように助けたり、体のバランスをとることで、神経機能の正常化を促したりすることがメインの目的となります。ですので、医療機関で行われる治療の補助的なモノと考えていただくとよいと思います。
軽度外傷性脳損傷へのカイロプラクティックの対応法
ここで対象としているのは、脳に器質的な損傷(実際に画像診断などで確認できるような組織の損傷)が無い場合です。この場合、神経の機能が上手く働いていないために症状が出ていると考えます。
脳の機能は、階層構造になっていて、まず感覚情報が伝わることにより、その情報を判断し、注意を向けます。それを土台として、記憶がおこなわれます。記憶は、何かを経験・体験することで、その結果として生まれます。そして、人間は経験するために生きている、と言われています。そのため、記憶という情報の集積は、人生の中で非常に重要なのです。
脳の機能を回復させるためには、まず土台となっている各々の感覚器官が、正常に機能するように回復を助けます。カイロプラクティックの考え方を元に、骨格からの調整による刺激、脳神経(視覚、聴覚、平衡感覚など)などの機能回復のための手技やトレーニングを行います。
神経機能や脳の機能の回復も、筋トレと同じように簡単なもの・単純なものから、難しいもの・複雑なものへステップ・アップしていきます。
末梢の神経を刺激することで、中枢である脳の機能の活性化を図ります。また、受け取った情報を処理するための脳内のネットワークが乱れをきたした為、脳の高次機能と呼ばれる、記憶・注意・理解・行動遂行・計画が上手く機能しないと考えられるので、そのネットワークが連携できるように練習していきます。
医療機関においても、高次機能障害おける手術や薬の治療法は確立していないと言われています。
脳の神経細胞は成人になると一部の細胞以外は新しく再生しません。しかし、脳には可塑性というものがあり、簡単に言うと「学習能力があるので、練習すると上達する」ことができます。したがって、衝撃によって狂ってしまった神経のネットワークを元の状態に近づくように訓練していくことができます。
これらは、病院では作業療法や心理療法でリハビリしていきます。脳障害における高次機能障害の回復は、1年以内までは急速で、2年以降では症状が固定されやすくなります。したがって、早めの対応が重要です。
カイロプラクティックでは、カイロプラクティックなりの考え方、アプローチ法で神経機能に働きかけます。少しでも早期に復帰できるようお手伝いさせていただいております。
参考サイト
症状の重い方はまずこちらにご相談されることをお勧めします。
脳脊髄液減少症に関することはこちら
お問い合わせはこちらです