筋肉の収縮の種類
同業者の中でも筋肉の収縮の仕方を間違って覚えているな~と思わせられることがたまにあります。また、当院ではクライアント様にホームケアとして運動を行ってもらうことが結構ありますが、その際、この様な知識や理解があると、運動を目的に沿って正しく行えているか自分で判断することが出来ます。
自分の知識の整理も兼ねて、今回は筋肉の収縮の種類について記事を作りました。
筋肉の収縮の種類
筋肉の収縮する様式には3種類あります。
①コンセントリック(求心性)収縮
②エキセントリック(遠心性)収縮
③アイソメトリック(等尺性)収縮
特殊な筋出力形態として
④アイソキネティック(等速性)収縮
があります。
①のコンセントリック収縮と②エキセントリック収縮は、2つ合わせてアイソトニック(等張性)収縮と言います。何か物を動かそうとした時、物自体の重さは動かしている最中は変わらないので、筋肉に対する負荷(張力)は一定です。したがってこれを等張性収縮といいます。
コンセントリック(求心性)収縮
短縮性収縮ともいいます。
ゴムの両端をもって引き伸ばすと、両端は中心方向に縮もうとします。筋肉の線維も全体を見ると中心に向かって縮もうとする時に力を発揮します。
図のようにアームカールを例にとります。アームカールは上腕(二の腕)の筋肉のトレーニング法です。ウェイトを持ち上げる動作がコンセントリック収縮にあたります。二の腕にちからコブが入っているのが分かります。筋肉が縮むことで力を発揮しています。
一般的な筋肉の使い方としてイメージされすいの運動様式です。
エキセントリック(遠心性)収縮
伸張性収縮ともいいます。
これはウェイトをゆっくりと降ろす動作の時の筋肉の力の発揮の仕方です。ウェイトを持ち上げた状態から、いきなり腕の力を完全脱力してしまうと、バタンとウェイトを落としてしまうでしょう。そうならないよう、ゆっくりウェイトを降ろそうとすると上腕の筋肉は力を出しつつ、縮んだ状態から徐々に伸ばされていきます。このような筋線維が力を発しつつ、距離が伸びていくような力の発揮の仕方がエキセントリック収縮と言います。
エキセントリック収縮の方が、コンセントリック収縮より筋肉に対する負荷が大きいと言われています。したがって怪我の原因にもなり易いですが、上手に行えば鍛える効果も高いと言えます。
トレーニング業界では、コンセントリック収縮の運動をポジティブ・ワーク、それに対してエキセントリック収縮の運動をネガティブ・ワークということもあります。
アイソメトリック(等尺性)収縮
求心性(短縮性)収縮、遠心性(伸張性)収縮はアイソトニック(等張性)収縮にカテゴライズされ、筋肉の線維が縮んだり伸びたりしながら力を発揮する収縮であると先ほど述べました。つまり、動きが伴った筋力の発揮の仕方です。
それに対し、アイソメトリック収縮は日本語の「等尺性」が示す通り、筋の長さが変わらない力の発揮の仕方です。したがってアイソトニック(等張性)収縮は動的収縮、アイソメトリック(等尺性)収縮は静的収縮といわれることもあります。
アイソメトリック運動の具体例としては、両手の平を合掌のように自身の目の前で合わせ、両手で全力で押し合いをした結果、手の位置はそのまま同じところに留まっていますが、筋力は発揮しているという場面があります。また、家の壁を全力で押した時も同様に動きはありませんが、力は最大筋力が発揮されています。
姿勢を維持する筋肉もアイソメトリック収縮を行っている場面が多いです。
等張性収縮と等速性収縮について
ここから等速性収縮についての話になります。一般の方には全く必要ない情報ですので読み飛ばして下さい。なぜなら、日常的な動作では、水泳以外で行われることはほとんどない筋の収縮形態になるからです。特別なリハビリ機器に携わる理学療法士か、研究者しかかかわることが無いと思います。
便宜上、アイソトニック(等張性)の運動ではウェイトの重さは変わらないので、筋への張力も変わらないことになっていますが、実際には関節の角度で筋への張力は変化します。
先の例で挙げたアームカールでの短縮性収縮で説明します。腕を下に垂らしている状態では上腕二頭筋には負荷はあまりかかっていません。そこからウェイトを持ち上げ始めた瞬間は、慣性の法則で静止している物体を動かすのに大きな力が必要となります。腕が床と水平の位置(肘の角度90°)がテコの原理で二頭筋に一番負荷がかかり、そこを過ぎるて手が肩に近づくほど上腕二頭筋にかかる負荷は減っていきます。
筋出力と筋収縮の関係
筋肉の出力には、重いものを動かせるかを表す筋力と、動かすのにかかった速度があります。一般的な言葉として筋力を表すのに「パワー」と言っていますが、本来「パワー」とは筋力と速度を掛け合わせたものです。
コンセントリック(求心性/短縮性)収縮では、動作速度と最大筋力の関係は、研究において最大筋力の30%の時がパワーの最大値となることが分かっています。それ以上の筋力を出そうとすると、運動スピードは遅くなっていきます。
角速度
ストレートパンチを打つなど、腕を体の前に真っ直ぐ伸ばす運動を例に考えてみます。関節の運動は、バネがビョ~ンと伸びるように真っ直ぐ動くわけではなく、実際には肩と肘の関節が円運動をして全体として手が前に突き出された形になります。
この様に関節の運動は円運動で動きます。直線運動の場合、速さは単位時間当たりの移動距離で表しますが、円運動の速さの場合、単位時間当たりの移動角度で表します。
等速性収縮
上記の情報を踏まえ、再度アームカールのコンセントリック(短縮性)運動を例に見てみます。
一番下に降りてある位置ではウェイトは静止した状態であり、そこから持ちあげる瞬間、慣性の法則からウェイトを動かすのに大きな力が必要です。理論上、前腕が床と水平になるポジションの時に上腕の筋には最大の負荷がかかりますが、初動からウェイトには加速度がついているため角速度は上がっています。
この時、ウェイトの重さは、20kgのものをもっていれば、終始重さは20㎏のままで変化はありません。しかし、うごかすスピードは変化しています。
この運動は、負荷(抵抗)は一定、速度は可変、と表されます。
次に水泳のクロールを考えてみます。
水中での手の搔き(プル動作)は、水の抵抗があるため一定以上のスピードで腕を動かすと、収縮している筋肉にはその時の最大負荷が可動域全体にかかっていることになります。この負荷(抵抗)というのは速く掻こうと強く力を加えれば、それと同等の抵抗が加わります。
この運動は、負荷(抵抗)は可変、速度は一定、と表されます。
この水泳のような運動の収縮を等速性収縮といいます。
通常の動的収縮である等張性収縮(コンセントリック&エキセントリック)は筋の出力にピークがあり、動作全域で最大筋力が発揮される訳ではありません。一方、等速性収縮は動作全域で最大筋力が発揮できるため、効率的に可動域全域に筋肉に刺激を入れることができるので、主に筋力が弱った病気や怪我の人のリハビリや、研究における筋出力の測定などに用いられています。
等速性収縮の運動をちゃんと行おうとすると、一定の速度のなかで最大負荷が常にかかるように負荷を制御できる機械が必要になります。等速性収縮では日常では、ほとんど行われない筋収縮形態なので、一般的にはあまり取り入れられないトレーニングとなります。
分類表
名称がこんがらがってしまう人(自分)へ向けて分類表を作ってみました。参考になるかな?
動/静 | 別名 | ||
動的収縮 | 等張性(アイソトニック) | 求心性(コンセントリック) | 短縮性 |
動的収縮 | 等張性(アイソトニック) | 遠心性(エキセントリック) | 伸張性、ネガティブ・ワーク |
動的収縮 | 等速性(アイソキネティック) | 求心性&遠心性 | |
静的収縮 | 等尺性収縮(アイソメトリック) |
先ず、動的収縮と静的収縮に分類できます。動的収縮の中に等張性と等速性があります。等張性収縮の中に求心性と遠心性があるといった具合です。
まとめ
今回は筋肉の収縮の種類について解説していきました。
当院でご指導させて頂く運動も、コンセントリック(求心性)収縮、エキセントリック(遠心性)収縮、アイソメトリック(等尺性)収縮のいづれかに当てはまります。運動の理解が深まればより効果的なトレーニングが行えるでしょう。
では、今回はこの辺で。
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